新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

<ザ・キャンパス>外伝

 2014年発表の本書は、マーク・グリーニーが書き継いだトム・クランシーの「ジャック・ライアンもの」。このところの主人公はライアン大統領ではなく、ジャック・ジュニアも所属する民間情報機関<ザ・キャンパス>である。大統領が先頭に立ってドンパチと言うわけにはいかないので、当然ではある。

 

 本書はこのシリーズの中でも「外伝」の位置付け、大統領はもちろんジュニアも、ほとんどの<ザ・キャンパス>メンバーも登場しない。主人公はメンバーのひとりドミニク・カールソー。イタリア系でFBI勤務経験がある、32歳の調査員だ。ドミニクはインド・中国・日本を巡るトレーニング行に出ていた。インドで元イスラエル軍特殊部隊の大佐から、格闘術の実習を受けていた時、大佐一家をイランの暗殺部隊が強襲、一家を皆殺しにした。ドミニク含め良く闘ったのだが、相手は自爆スーツを着ていたのだ。

 

    

 

 九死に一生を得たドミニクは、かつて双子の兄ブライアンを目の前で殺されたこともあり「サバイバーズ・ギルト」に悩まされながら、大佐一家の復讐に乗り出す。大佐の秘匿された居場所が漏れたのは、ワシントンDC中枢に情報漏洩ルートがあったから。

 

 本書にはイラン、ロシア、イスラエル等のマッチョ戦闘員も出てくるが、闘いの中心は彼らではない。ハーバード出のエリート、韓国系の女性システムエンジニアイラン革命軍の少佐、NPO<国際透明性計画>所属のジャーナリストたちが、機密情報を巡ってサイバー空間とリアル空間の境目で闘う。

 

 お坊ちゃまエリートであるNSC職員ロスは、主に自我の発露のためにデジタル機密情報を持ち出す。最初はイタズラ半分だったが、NPOやその背後にいる反米国勢力に、深みに引きずり込まれていく。

 

 グリーニー得意のワンマンアーミーもの、ドミニクの活躍がリアルでした。このシリーズ、ますます好調ですね。