新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

世界を動かしているのはカネ

 2005年発表の本書は、東京銀行を振り出しに国際金融の世界を巡った倉都康行氏の現代金融論。1990年代に「金融Big-Bang」というブームがあり、僕自身金融の勉強をしたとことがあって、最後にたどり着いたのが本書。デリバティブズをはじめとする金融技術が落ち着いた時点で、金融史全体を振り返りながら概観してくれた書である。

 

 ニクソン・ショック以降、世界のカネは金の保有量という天井を突き破って増殖している。儲かるところにはどんどん集まり、いざという時の引き際も早い。著者がいう「金融力」では、米国が第二次世界大戦後圧勝していて、日本やドイツが経済力を付けても、この分野では太刀打ちできない。2005年時点では、ユーロが可能性を秘めているが、中国元はまだまだだとある。

 

        

 

 経済力と違って、米国が独り勝ちだとは言っても米国市民のためになるかというと、そうではないのが問題。国籍に関係なく、カネもちと才覚のある人間だけが法外なリターンを得ているのだ。

 

 本書では、デリバティブズの内容について、先物スワップ・オプションなどの説明がある。ヘッジファンドの目の付け所は、単なる安く買って高く売るのではなく、

 

・市場が判断を誤っていると判断した時、それが是正される動きを先取りする

 

 ことだとあったのが印象的だった。

 

 本書を読み直した理由は、今年になってからのSVB破綻など国際金融分野に影が差していること。本書発表以降もリーマンショックなど、冷静に考えれば破綻しかねない金融商品が大手を振って歩いていた。規制はできるのだが、それをかいくぐる手口で危険な金融商品は生き延びている。AI時代になって、ますます高度でわけのわからない金融商品(&技術)が出てきそうな気配があり、再読した次第。まあ、僕の個人資産などたかが知れていますがね。