2016年発表の本書は、昨年「眠る狼」を紹介したグレン・エリック・ハミルトンの第二作。センセーショナルなデビューを果たした前作の勢いそのままに、元レンジャー隊員バン・ショウの活躍を好調に描いている。
バンの本名はドノバン、祖父と同じ名前だ。祖父はドノと呼ばれ、彼はバンと呼ばれるようになった。9歳の頃から筋金入りの犯罪者だったドノから、泥棒のテクニックを教えられる。14歳の頃には自ら倉庫荒らしなど企画できるようになっていた。
前作で10年振りに戻った故郷シアトルでドノの死を目前にし、犯人を挙げ部隊に戻ったたバンは、除隊してまたシアトルのドノの家に住みついた。ドノたちが経営していた酒場は、ルースという若い女のものになり、バンは彼女と半同棲のような暮らしをしているが、本人は失業状態。
前作にも登場したドノの仲間の裏カジノ経営者ウィラードから、姪のエラナが2日ほど音信不通だから探してくれと依頼される。ちょっとしたアルバイトのつもりで引き受けたバンは、山小屋でエラナとその恋人ケンドらしい死体を発見する。一見ケンドがエラナを射殺し、自分も銃で自殺したように見えるが、熟練した泥棒&兵士であるバンは、現場に第三者がいて何か大きな荷物を持ち去ったことを知る。
エラナもバンの幼馴染で、同じく泥棒稼業の家で育てられた。15歳でバンたちの犯行を手伝い、逮捕されて1年余り少年院で過ごした。見かけはほっそりした繊細そうな女だが、ハラは座っている。エラナとケンドの周辺を洗うバンの前に、死んだはずのエラナが現れるが、多くを語ってはくれない。
前作ではウィラードらドノの泥棒仲間の支援は受けるものの、ほぼ単独で行動していたバンだったが、今回は有力な援軍がやってくる。部隊でバンの部下だった韓国系のレオナルド・パクは、一流の狙撃兵。除隊して行く当てもなく、シアトルまで流れてきたのだ。荒事も辞さない裏高利貸、ケンドの父親で巨大デベロッパーの社長、ロシアマフィアのボスの放蕩息子などがからんできて、バンは組織的陰謀に巻き込まれていく。そんな彼を、ルース・エラナ・パクらが支える。まるでチームのようだ。
スピーディな展開はそのまま、前作を上回る事件のスケールで、どう分類していいか分からない作品です。現代の「義賊もの」か、ひょっとしたらネオ・ハードボイルドなのかもしれません。