新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

19歳赤毛の美女、危険につき

 1942年発表の本書はハドリー・チェイス作で、昨日紹介した「ミス・ブランディッシの欄」の続編。発禁になった前作から4年だが、ストーリーとしては20年が経過している。牛肉王の娘ミス・ブランディッシは、ギャング団の殺し屋スリムに監禁され数ヵ月を過ごした。スリムは逮捕されたのだが、その間に彼女は身籠り女の子を産んだ。それがキャロル。

 

 母親からは600万ドルにも及ぶ遺産と美貌、官能的な肉体を、父親からは殺人狂の血を受け継いでいる。10歳までは可愛い女児だったのだが、徐々に凶暴な面が出て来た。突然キレると、手が付けられなくなってしまうのだ。16歳の時、ある男の片目を潰す暴行を働き、それ以降は精神病棟に軟禁されている。

 

 そんなキャロルが、嵐の晩に病院を脱走した。逃走中に交通事故を起こした彼女は、養狐場を営む青年スティーブに救われる。しかしそこには銀行強盗を働き、仲間を裏切ったスティーブの兄ロイも身を寄せていた。

 

        

 

 彼女の祖父にあたる牛肉王は、彼女が2週間精神病院を出て暮らせるようになったら信託してある全財産を譲るとの遺言を遺していた。これは脱走も含むので、実は信託財産を少し横領していた遺産管財人の弁護士は、彼女を捕まえたら5,000ドルの賞金を出すと発表。保安官、新聞記者など現地の人だけでなく、ロイを殺しにやってきたサリバン兄弟という殺し屋も、キャロルを探してカネにしようとする。

 

 通常のキャロルは(母親同様)純粋無垢な女性、スティーブと熱烈な恋に落ちる。しかし頭の中で何かが弾けると、殺人狂になり鋭いツメで大男の目をえぐる。サリバン兄弟に追い詰められるスティーブとキャロル、しかし後半になると立場が逆転。スティーブを殺されたキャロルは、サリバン兄弟への復讐を始める。

 

 これも50年前に読んでドキドキした本、印象的なシーンのいくつかは覚えていました。このころのバイオレンスは、まだ可愛かったなとも感じましたが。