2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は、今月に出版されたばかりの「日本の半導体70年史」。筆者の牧本次夫氏からいただいたものである。トランジスタ時代からの業界の推移を、インサイダーの目で記述してある。 筆者が技術分野としてこの業界を目指したきっかけは、ソニーのトランジスタラ…
以前「サイレントコア」や「UNICOON」シリーズの架空戦記を紹介している大石英司は、1980年代後半からの架空戦記ブームの中で「現代ものでややSF傾向」な作品を得意とし、特に航空機への思い入れが強い印象だった。デビュー作「B-1爆撃機を追え」がそれを表…
2022年発表の本書は、昨年「日本人は何も知らない」を3冊紹介した「めいろまさん」こと谷本真由美氏のシリーズVol.4。前作と何が違うかというと、ロシアのウクライナ侵攻があって国際情勢がより緊迫したこと。本書でも欧州事情を中心に、普通の日本人の国際…
1986年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<マット・スカダーもの>。得意の射撃で強盗を撃った際、跳弾で無垢の少女を殺してしまったマットは、警察を辞め無免許の私立探偵をしている。アル中になったこともあり、今は酒を断って暮らしているが、本書が…
2023年発表の本書は、エストニアで国際防衛安全保障センター研究員を務める保坂三四郎氏のロシア諜報機関史。ロシア革命で全国に密告網を作り上げたチェーカーを祖とするロシアの諜報機関は、スターリン体制でも彼の死後も、ソ連崩壊をも超えて生き延びた。…
1958年発表の本書は、冒険小説の雄アリステア・マクリーンの第三作。以前、 ・北海でドイツ軍と戦う軽巡洋艦「女王陛下のユリシーズ号」 ・地中海でドイツ軍の巨砲を破壊する「ナヴァロンの要塞」 を紹介しているが、本書が第二次世界大戦三部作の完結編で、…
1994年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶の「兵法35箇条解説」。グリーンベレーの教官をしフランス外人部隊で闘ったという経歴はさておき、作者の戦争論はとてもヴィヴィッドだ。戦略級よりは、戦術・戦闘級の理論や実践の啓示にはうなずけるものが多い。本…
秋葉原のBook-offで、たまたま見つけたのがこのブルーレイ。これまでシーズン4まで紹介したCBSの「Hawaii-5O」のシーズン5だ。他の映像ソフトは全部DVD(35万画素)で、ブルーレイ(207万画素)は初めて。最初に観た時に、画質がいいと感じた。気のせいだ…
ドロシー・L・セイヤーズは、合計11編の「ピーター・ウイムジー卿もの」の長編を遺した。ここまで第一作「誰の死体」から第六作「5匹の赤い鰊」まで紹介してきたが、第七作「死体をどうぞ」は入手できていない。本書「殺人は広告する」は第八作で、1933年に発…
2024年発表の本書は、昨日「ウクライナ戦争の200日」を紹介した小泉悠氏が、サイバーセキュリティの専門家小宮山功 3)安い地価や良好な交通アクセス 4)需要、消費地に近い ことのほか、法令の制約が少なく、税制が有利、技術者らが得やすいなどであれば…
2022年発表の本書は、ウクライナ戦争が始まってからの200日間に、以前「現代ロシアの軍事戦略」を紹介した小泉悠氏が、識者と7度にわたって対談した記録。対談者と、印象的な議論をまとめてみた。 ◇批評家東浩紀氏(2022/4) ・この20年間(グローバリズム…
1961年発表の本書は、以前「愚か者の祈り」を紹介した警察小説の雄ヒラリー・ウォーの「フェローズ署長シリーズ」の1作。ハードボイルド作家を目指した作者は、最初私立探偵ものを3作出したものの売れず、クロフツ流の「足を使う警官」を主人公にし社会問…
このDVDは、ご存じネイビー犯罪捜査班本家NCISのシーズン13。前回の最終回で、ギブス捜査官は、可愛がっていた子供に脚と胸を撃たれる。目の前で上司を撃たれたトニーらに、地中海上にいる航空母艦に運び込まれるが、手術中に心停止を起こすなど危険な状態に…
昨日に引き続いて、ダニエル・フリードマンの<引退刑事バック・シャッツもの>の第二作(2014年発表)を紹介したい。前作「もう年はとれない」で犯人に銃撃されたバック。九死に一生は得たものの銃創や骨折がなかなか治らず、今は妻のローザと介護付き老人…
昨日、還暦を迎えた女4人組の話「暗殺者たちに口紅を」を紹介した。軽快なスパイスリラーだったが、今時60歳は老人とは言えない。そこで敬老の日の今日、手に取ったのが、2012年発表の本書。ニューヨークの弁護士ダニエル・フリードマンのデビュー作で、マ…
2022年発表の本書は、歴史ミステリ作家ディアナ・レイバーンが「年配女性のカッコよさ」をテーマに書いたスパイスリラー。WWⅡで各国は、多くの諜報機関を作った。そのいくつかは正式に国家所属となった(例:OSS⇒CIA)が、闇組織として残ったものもある。<…
2020年発表の本書は、10万人の高齢者と向き合ってきた眼科医平松類氏の医療テクノロジー論。AI、IoT、AR、VR、ビッグデータ等を活用して、医療現場と高齢化社会がどう変わるかを示したもの。眼科はむき出しの臓器で画像診断がしやすい眼を扱うことから、他の…
1988年発表の本書は、昨年「このささやかな眠り」を紹介したゲイ作家マイケル・ナーヴァの第二作。前作で33歳だったゲイの弁護士ヘンリー・リオスは、36歳になっている。やはりゲイだった容疑者ヒューを釈放させはしたものの死なせてしまい、ヘンリーは事件…
巨匠エラリー・クイーンは、短編の名手でもある。3名ほどの容疑者をあげておいて、鮮やかな決め手でそのうちの一人を犯人と名指しする。作品のハイライトを凝縮した形の短編は、デビュー当時から人気だった。それは2人のうちの一人フレデリック・ダネイが…
本書は先月「神津恭介への挑戦」を紹介した、高木彬光の「恭介平成三部作」の第二作。前作で東洋新聞の社長令嬢清水香織が登場し、恭介を伊東の別荘から意見現場に引きずり出すようになったとの設定である。前作ではあまり目立たなかった香織自身の捜査活動…
本書は以前「京都ぎらい官能編」を紹介した、NHK「いけず京都シリーズ」の案内人井上章一国際日本文化研究センター所長が、2016年の新書大賞を受賞した記念作。筆者は京都市右京区嵯峨育ちゆえ、自己紹介欄に京都市ではなく京都府出身と書くという。外部の人…
本書は深谷忠記2006年発表の、壮&美緒シリーズではない単発ものである。僕の書庫に残っている、作者最後の作品である。作者の才能は疑いもないのだが、シリーズものに限界があるのも確かだ。どうしてもパターンが決まってくるし、壮&美緒の場合には官憲で…
1993年発表の本書は、ご存じ津村秀介のアリバイ崩し「伸介&美保シリーズ」。今回の舞台は十和田湖&奥入瀬渓流。風光明媚で有名な観光地でもあるのだが、とにかく不便なところだ。僕自身も何度も旅行の計画を立てて挫折し、結局仕事の付き合いで現地の販売…
1976年発表の本書は、西村京太郎の誘拐もの。作者はこのころ「消えた乗組員」「消えたタンカー」など、「消えた・・・」シリーズを発表している。非常にレベルの高い作品群で、消失トリックを極めようとしていた。本書では、当時野球ファンならずとも知らないも…
2023年発表の本書は、すでに10冊ほど紹介しているジャーナリスト大野和基氏が世界の知性にインタビューするシリーズ。今回のテーマは資本主義。欧米の学者8名がインタビューに応じていて、環境・経済・倫理・金融などの専門性から新本主義はどうすべきかを…
1947年発表の本書は、以前「被害者を探せ」「探偵を探せ」などを紹介したパット・マガーの最高傑作とされる作品。高名な評論家中島河太郎が1951年に発表したミステリーベスト10で、7位(*1)に入っている。作者は「被害者・・・」でデビューし、普通のミステリ…
本書は2010年に発表されたが胡錦涛政権では発禁とされ、習近平政権になった2013年に再版され、2020年に加筆されたもの。日本語訳(2023年)以前に米国では翻訳書が出版され、米国国防予算を50億ドル増やすことに寄与したという。著者の劉明福は山東省生まれ…
日本の学校教育の欠陥として「正解のある問題ばかりで、問題を探させない」との指摘がある。教育論はともかく、一般に問題は解くより探すのが難しい。ミステリーの女王アガサ・クリスティは、晩年このタイプの作品をいくつか書いた。1966年作品「第三の女」…
1939年9月、ナチスドイツのポーランド侵攻で、WWⅡの幕が上がった。以降、足掛け6年間欧州は戦乱に巻き込まれる。2000年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶応のナチスドイツのコレクション本。作者自身がパリ(の古書店)などを巡って、収集した写真・ポスタ…
1940年発表の本書は、冒険小説の先駆者ハモンド・イネス初期の作品。1939年9月、ナチスドイツはポーランドに侵攻した。これまでオーストリアやチェコ、スロバキアなどを併合してきたヒトラーは、常に「これが最後の領土の要望」といいながら、さらに次を狙…