新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

さよならトーマス

 ・・・といっても機関車の話ではない。先月倒産した英国の旅行代理店の老舗「トーマス・クック社」のことである。ちょうど先月英国に出張していたこともあり、感慨深いものがあった。出張時にも「Brexit」の議論をしていたので、その余波がついに企業倒産の引き金になったかと、別のブログでもコメントした。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/09/25/060000

 

 報道によると、「Brexit」もあるけれどビジネスモデルの古さが災いしたとのこと。同社は、急速に進展した旅行業界でのデジタル化・インターネット化に乗り遅れたようだ。ある意味その象徴と言えるのが、この「トーマス・クックの時刻表」。僕の本棚には、2013年のものが残っていた。欧州の長距離鉄道のダイアグラムはそう簡単に変わらないし、毎年買うようなものではない。それでも毎年欧州に何度かは出張し1度は旅行する僕が7年近くこれを買っていないことに、同社の運命があらわれていたというのは言い過ぎだろうか。

 

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 思い出してみると25年ほど前、ドイツ南部の会社と合弁することになりボーデン湖沿いのコンスタンツという街にしばらく通った。その時この時刻表を開き、チューリッヒの空港が近く1時間に1本列車があって所要1時間というのがわかった。多分これが最初に出会いだったろう。

 

 一度はドイツ・ベルギー国境の街アーヘンに行くことになり、フランクフルト空港で降りてライン川を列車で下った。1か所乗り遅れればその日のうちにアーヘンに着けないきわどいルートを、この本で確認しながら行ったのも覚えている。

 

 この10年ほど夫婦で旅行に出かけるにあたりプラニングするのは僕なので、列車には乗らないかもしれないが都市間の距離感や移動の便利さを知るには格好の参考書だった。今後この赤い本は誰が出版してくれるのでしょうか?Webだけになってしまうのでしょうか?・・ともあれ老舗の旅行代理店、180年の歴史が終りました。