新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

鉄道王国ドイツの春

 昨年からの「COVID-19」騒ぎで、すっかり海外出張・旅行に縁遠くなってしまった。もちろんフライトは飛んでいるし、検査結果がないと入れてくれない国ばかりではないのだが、心理的にも旅行に出ようという気にならない。僕が最初に行った外国は米国の西海岸だったが、一定期間仕事で滞在した最初は南ドイツだった。

 

 当時すでにドイツ統一は成っていて、13の国の連邦国家だった。一番長くいたのはスイス国境のコンスタンツという街、その後フランクフルト・ケルン・デュッセルドルフハノーファーなどに滞在した。南西エリアの都市がほとんどで、北海沿いや旧東ドイツ地域には足を踏み入れていない。

 

 家内との旅行もパリやフランクフルト、ウィーンなどから、北に向かうのではなくバルセロナやローマに足を向けるようになっている。そこで、せめて書籍の上ででも北東ドイツの雰囲気を味わおうと思って本書を買った。似たような本は多いのだが、「列車で巡る・・・」という題名に魅かれたのだ。

 

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 新幹線に近い高速鉄道からローカル線、トラムにいたるまで、ドイツは「鉄道王国」と言ってもいい充実ぶり。それも某国のように「いつくるかは分からないな~」といういい加減さではなく、ダイヤはほぼ正確に守られる。

 

 今回旅する人は、特に鉄道に造詣深い旅行作家の野田隆氏。フランクフルトから、時計回りに、ケルン・ハノーファー・ベルリン・ライプツィッヒ・ニュルンベルグを巡ってフランクフルトへ戻ってくる春の旅だ。途中旧都ボン、港町リューベック、歴史の街ポツダム・ワイマール、磁器の都マイセンなどに途中下車する。

 

 まえがきにあるようにドイツの大半は平地の森林地帯、今回の旅は全部大ドイツ平原の世界遺産を巡ることになる。総計何日かかった行程かもわからず、現地で泊まったホテルや食べた食事についての記述はあまりない。ただひたすら列車に乗り、世界遺産の写真を撮る旅だ。観光ガイドとして読むとそのあたりが少し不満だが、鉄道好きの筆者だけに駅舎や切符、列車の設備、設備の運用については面白い記述がみられた。

 

 夏となるとシーズンなので大変込み合うけれど、春から初夏にかけてなら北東ドイツも旅行したいなと思います。そんな気分にさせてくれたのはいいのだけれど、さて「COVID-19」騒ぎはいつごろ忘れることができるでしょうかね。