新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

第三次世界大戦に備えて

 中東で、アフリカで、アジアで・・・紛争の種はくすぶり続けている。世界中が相互不信に陥っている印象すらあって、どこかで上がった火の手が世界を覆ってしまうかもしれないと、僕は危惧している。

 

 20世紀、人類は二度の世界大戦を経験した。今世紀三度目が来たらこれまで以上の国や地域が巻き込まれるだろう。グローバリゼーションが地球の隅々まで浸透していることは、今回の「コロナ禍」でも明らかになった。

 

 本書は、日大の専任講師を務めた三野正洋の数ある軍事研究書のひとつ。作者には戦闘機・戦車・軍艦・関連技術の比較研究が多いのだが、本書ではとうとう国と民族の比較をしてしまった。20の国や地域の国民性や現有戦力を比較したもので、2001年に出版されている。戦力分析は20年もたっているのでそのまま鵜呑みにはできないが、過去の戦争から得られた「国民性」は大変参考になる。良く知られたところでは、

 

・イギリス とにかく他国や民族を利用するのが上手

・イタリア 小規模な軍は強いが、大きくなるほど腰抜け

・ロシア 軍隊は国というよりは政権の従属物

 

 なとというものがある。ただ今回はあまり日本で知られていない3つの国を見てみよう。

 

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 まず、今シリアともめているトルコ。実は19世紀のクリミア戦争以降、戦いを繰り返している国である。第一次世界大戦では最終的に敗北したものの、イギリス相手に頑強に戦った。しかし数次のギリシア戦争では苦杯をなめている。作者の評では、戦わなくていい戦争に首を突っ込む傾向があるとのこと。今のシリア紛争もそうかもしれない。

 

 次にタイ。アジアのほとんどが欧米の植民地になった時期に、日本とこの国だけは独立を保てた。立憲君主国で、王制がしっかりしていたことがその原因だろう。朝鮮戦争ベトナム戦争にも参戦したが、自国が戦場になったことはない。ただ数次の軍事クーデターはあって、軍隊は市民の声をバックにした政治勢力のようなもの、対外戦力は未知数である。

 

 最後にインド。世界第二位の人口を誇る大国で、イギリスから独立後パキスタンや中国と限定戦争を戦っている。核兵器保有国であり強大な戦力を持ってはいるが、作者はインド軍の欠点を「カースト制度」やヒンズー偏重の宗教色にあるという。それらがネックで、戦時の柔軟な対処が難しいからだ。

 

 面白い分析の書でしたが、決して日本軍が彼らと戦うシーンは見たくないですよ。ただいざという時の知識としてだけ。