新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

財政再建はもちろん必要

 本書は「霞ヶ関埋蔵金伝説」で知られた、ユニークな経済学者高橋洋一の初期(まだ財務省勤務だった?)の著作。実は僕の一番の苦手が「お金」、自分の生活に必要なくらいのものは理解できるのだが、デジタル技術や軍事戦略と違って大きなお金のセンスには自信がない。そうはいっても初歩の経済学くらいは知らないと、思わぬところで恥をかくかもしれないと買ってきたのが本書(2008年発表)である。

 

 ある人に聞いたところ、「非常に平易に書いてるから、お前さんでもわかるよ」とのことだった。確かに読み始めてみると、記者の質問に著者が口語で答える形。難しい言葉もほとんど出てこないので、すぐに読み終わってしまった。

 

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 著者は財務省の人だが、東大理学部数学科と経済学部経済学科卒という変わり種。本書には財務省のことを評して、

 

・東大法学部が中心だから、法律は詳しくても数字は分かる人が少ない。

・基準を作るのが偉い人との考えを改め、本当の金融の専門家を雇うべき。

 

 などと手厳しい。若いころに財政金融研究所に出向していてその時の上司が竹中平蔵氏、その縁があって小泉・竹中改革の財政政策上のブレーンを務めている。彼の言う「埋蔵金」とは、

 

・一般会計ではなく特別会計に隠されているもの

・一般会計でも、バランスシートにある資産

 

 などを指していて、特別会計には道路特定財源や郵政関係、財政融資資金関係などがある。著者は小泉・竹中改革でも、道路公団民営化、郵政民営化、政策金融機関一本化などに尽力したが、これらの改革はいずれも「埋蔵金」にからむものだ。

 

 旧建設省や旧郵政省に限らず、霞ヶ関では「内部留保」の仕組みを作った人が後輩たちから尊敬される。だから数多くの内部留保金、すなわち埋蔵金があるわけだ。財政融資資金などは、小泉改革でぽんと20兆円でてきたと本書にある。

 

 なぜ今本書を再読したかというと、「COVID-19」騒ぎや豪雨災害(激甚災害になって全額国庫負担)で、ますます国の負債が増えるからだ。「骨太の方針」の原案からは「財政再建」の文字も消えた。その一方、小泉・竹中改革以降公務員は減らされ、貧しい人たちへのケアは全く足りないとの非難がある。このままでは「もっともっと大きな政府」になりかねない。

 

 だから国民も「国のバランスシート」をよく見て、埋蔵金探しをすべきではないか。経済が苦手の僕でもそう思うのですから、皆さんやってみませんか?