「小泉・竹中改革は格差を広げ、貧しい日本を作った」と何人かの評論家が言う。僕は竹中先生には直接薫陶を受けているからだけではなく、この批判は当たらないと思っている。では竹中先生は、改革とその前後をどう総括しておられるのか、令和の時代にはどうすればいいとお考えなのか、それらをまとめたのが本書(2019年発表)である。
「激動の昭和」を受けた平成は31年間続いた。この時代Global&Digitalが進行し、あらゆるものが大きな変化にさらされた。いわば「激変の平成」だったと本書にある。筆者は平成を5期に分け、
1990~96 戸惑いの期間、バブルの後始末に失敗
1997~2001 金融危機の期間、金融破綻と株価下落
2008~12 最も失われた期間、数々の失政に震災が追い打ち
2013~ 再挑戦の期間、経済は持ち直すも長期政権の綻びが
と解説している。小泉・竹中改革は格差を縮め貧困化を救ったが、リーマンショックの麻生内閣の対応から、民主党政権の失政で「改革」を振り出しに戻してしまったという。平成の期間を通しての、代表的な10の愚策が列挙されている。
1)90年代に連発した、需要側にバラ撒く総合経済政策
3)日銀の数次にわたる失政、デフレ克服にあまりにも無策
8)東日本大震災の復興というフロンティアを活用できなかったこと
9)同復興目的の増税、本来なら減税すべきだった
10)財政健全化のための予算キャップ制を、麻生内閣が放棄したこと
特に自分の庭先だけ綺麗にしようと、「独立性」を盾にエゴを通した日銀に厳しい。そしてこれらから得られた教訓として、
1)規制緩和による市場への新規参入促進
2)民間の力を十二分に生かす官民パートナーシップ
3)優れた専門家による政策の検証
4)バトルをいとわぬ強い政治リーダー
5)コンパクトシティのような「明るい縮小戦略」
が挙げられている。著者が「縦割りを廃し総合的に進める」としたスーパーシティ法成立に尽力し期待をかけておられることも事実。僕も、なんらかの貢献ができればと思います。