この2年ほど日本郵政の周りでは、妙なことが頻発する。2019年末に事務次官のクビが飛んだことに始まり、今年になってからは「楽天」との業務提携だ。ここでも、総務省・日本郵政(含む全国郵便局長会)・郵政族議員の「鉄のトライアングル」が、かんぽ生命の不正販売やブラック体質を覆い隠そうと蠢いていたような気がする。さらにその根幹には日本郵政全体の闇体質があるはずだ。
何かが霞ヶ関の地下で蠢いている - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
本書は2020年に、経済ジャーナリストの荻原博子さんが発表したもの。メインの主張は「国民銀行」たる日本郵政が破綻した場合「あなたの預金・保険・信託はどーなる」なのだが、破綻危機を招いた背景についての記述も多い。
そもそも明治期、急いで近代国家たる全土通信網を整備するため、明治政府は地元の地主などに土地・建物・労働力などを提供させる方法を取った。それが特定郵便局長会(現在の全国郵便局長会)という「世襲制の公務員」を産み、田中政権での一大集金&集票マシーンとなった。橋本政権が郵便局が集めたカネを利権団体にバラ撒く「財政投融資」を止め、小泉内閣が「郵政民営化」を断行して、ある程度は是正した。しかし現在も、日本郵政を巡る闇は残っているわけだ。
筆者は日本郵政グループ(日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険・日本郵便)破綻の要因を5つ挙げている。
1)日本郵政とゆうちょ銀行の株価がデッドラインを割っている。
2)ユニバーサルサービスの枷が経営の首を絞める。
3)誰も経営者になりたがらない。
4)儲かる商品が作れない。預り金を運用できない。
5)政治の介入が止められない。
である。2)~5)については僕も知っていることだが、1)は本書に教えてもらったこと。日本郵政はその株式の2/3を売って東日本大震災の復興資金に充てる約束。残り1.2兆円だが、それには株価は1,132円以上必要。またゆうちょ銀行の株式の大半は日本郵政が保有しているが、半値以下になると減損処理しなくてはいけないデッドラインは866円。本書出版の時点ではいずれの株価もそれを下回っている。(5/24の時点で日本郵政924円、ゆうちょ銀行951円)
この方も小泉・竹中改革には批判的でしたね。まあ、お気持ちは分かりますが。