<外務省のラスプーチン>とあだ名された佐藤優元外交官、新自由主義を呪詛する論客法政大山口二郎教授。このお二人が対談した書というのでびっくりしたが、ほぼ15年の交流があったという。確かに主張に隔たりはあるが「政治的立場の違いは本質的な問題ではない。重要なのは話者の誠実さと知識だ」いう理由での交流らしい。
第二次安倍政権末期の2020年夏の出版で、対談の多くは2019年に成された。テーマは「長期政権の功罪と評価」である。戦後日本政界では、いずれも自民党の5つだけが長期政権と呼べる。権力持続の条件は、
・対米追随
・経済成長と国民生活の向上
・リーダーの課題挑戦
だという。戦後復興を果たした吉田政権、沖縄返還を成就した佐藤政権までは大きな政府指向だった。しかしサッチャー・レーガンの新自由主義の台頭につきあった中曽根政権から小さな政府指向が強まり、郵政民営化など「民で出来ることは民で」の小泉内閣でそれが完成する。
一時期下野していた自民党は民主党の失政によって政権を奪還し、第二次安倍政権はこれら4政権と肩を並べる長期政権になった。上記3つの条件を満たすだけでなく、官邸を強化し批判を許さない体制を作り上げた。いわば「選挙で選ばれた王」だという。
長期政権が終わった後は、例外なく混乱が起こる。小選挙区制で小粒になった政治家ばかりで、有力な後継者が自民党にいない。岸田議員では選挙に勝てず、石破議員では党が分裂するとの予測。そこで野党が共産党も含めて糾合して戦うべきとあるが、なんと主敵は維新の会である。野党共闘の新しい顔候補として、山本太郎議員の名前もあった。
初見の面白いエピソードがひとつ。評判の良くない森政権だが、森総理はよく勉強する人で、ロシアとの関係も良好。もう少し続いていたら北方領土の2島先行返還はあり得たとある。
お二人の予測通り、長期政権の後は混乱が起きています。でも山口先生の「共産党含めた野党糾合策」は失敗だったと思いますよ。