新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

自国通貨建ての国債デフォルト

 昨日「強権の経済政策」でジャーナリスト軽部氏の「アベノミクス評価」を紹介したが、では日本経済をどうすべきなのかを改めて見直すために、本書(2022年発表)を買って来た。著者の田村秀男氏は元日経の記者、現在が産経新聞論説委員などをしている。長年世界経済を取材し、自民党本部での会合などにも呼ばれる有識者だ。

 

 「アベノミクス」の三本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)は筆者が以前から主張していたこと。金融緩和は良かったが、財政出動は中途半端、成長戦略に至らなかったと総括している。最大の失政は消費税上げ、これが財政出動の効果を相殺し、必要な投資に回らなかった原因とある。

 

        

 

 MMT理論ではないが「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトはありえない」との黒田東彦氏の財務官時代の言葉を引用し、もっと国債を発行すべしとの主張だ。これは財政均衡論者の財務省への批判だけでなく、「国の借金、国民一人当たり1,000万円」などと喧伝する出身もとの日経紙も糾弾している。

 

 小泉内閣以降の新自由主義的政策は、日本を米国型の弱肉強食経済に引きずり込んだと批判。また岸田内閣の「成長と分配」も、金融資産課税を途中で放棄するなど不十分と切り捨てている。分配は重要だが、経済成長なき分配は無意味だともある。

 

 民間には2,000兆円もの資金が有り、これを誰かが借りて経済を廻す必要があるから、国債を発行せよ。集めた資金でインフラ整備、教育・子育て、研究開発を行い、日本経済を成長路線にのせようという主張だった。

 

 面白かったのは、拡大する中国経済のチョークポイント論。習政権がデジタル人民元などを企画し狙っているのは、中国元による金融決済システムの確立。それが完成するまでは、香港経由でのドル決済が命綱。もし米国が本気で中国経済を締めあげるなら、中国支配の強まる香港での取引を停止すればいいとある。

 

 財政均衡論には真向から反対の主張ですが、要は程度問題。日本経済(金融)の国際的な信用を失わない範囲の国債であるべしと思いますが・・・。