昨年はミリタリー作家の柘植久慶が、ケネディ暗殺事件を暗殺者の視点でフィールドワークした「JFKを撃った男」を紹介している。本書はニューオーリンズの地方検事として、ケネディ暗殺事件の疑惑に執念で挑んだジム・ギャリソンが記したドキュメンタリーである(1988年発表)。
筆者は事件当日は呆然とTVニュースを見ているだけだったが、容疑者として逮捕されたオズワルドがニューオーリンズで活動していたことから、事件に巻き込まれる。オズワルドは、筆者の知人でもある私立探偵バニスターのところに出入りしていた。そのオズワルドもルビーという男に、TVカメラの前で射殺されてしまう。
FBIの捜査だけでなく、特別に設置された「ウォーレン委員会」も独自捜査をするのだが、結論はロシアかぶれの元海兵隊員オズワルドの単独犯行で終わっていた。しかし3年後、筆者たちのチームは暗殺事件の矛盾点を洗い始める。おかしなことは一杯ある。
・オズワルドがロシアに渡り、家族を連れて難なく帰国できたこと。
・オズワルドがいた教科書ビル以外からも銃声がしたとの複数の証言。
・ライフルケースを持った複数の男の目撃情報。
・凶器とされるカルカノ銃の劣悪な性能、オズワルドの射撃下手。
・大統領の遺体が十分な検視をされていないこと。
・オズワルドがカルカノ小銃を持っている写真に変造の疑い。
・逮捕された後のオズワルドには弁護士も付かず、聴取禄も残っていない。
筆者たちは大規模な偽装・隠ぺい工作がされたものと見て、CIAと軍の一部が大統領暗殺を謀り、オズワルドをいけにえにして幕引きを図ったと考えた。ウォーレン委員会のメンバーも、オズワルド周辺に現れた人物も、テキサス州の知事さえも、一味ではないかと疑われた。しかし重要な証人は次々と謎の死を遂げる。暗殺の主要人物と目されたバニスターなどは、事件の1年後に死んでいる。
筆者はついに主要人物のひとりクレイ・ショーを逮捕するのだが、すぐにメディアから個人攻撃を受ける。曰くギャリソンはケネディ事件を州費を使って掘り返し、政治家として売り出そうとしている・・・そう、メディアも一味だったのだ。さらに筆者は、覚えのないピンボール賭博容疑で告発される。この裁判には勝ったものの、選挙の準備ができず地方検事4選は成らなかった。ショーも無罪となり、それ以上の追及は出来なかった。
迫力あるドキュメンタリーで、とても読みやすかったです。本書はケビン・コスナー主演で映画化もされましたね。