新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本型雇用が生んだ孤独な老人

 本書は2017年発表、著者の楠木新という名前はペンネームだとある。大手保険会社を2015年に定年退職、現在は楠木ライフキャリア研究所代表。就職する時、さだまさしの「関白宣言」が流行っていたとあるから、僕と同世代の人。自らの研究所でもコンサルなどしておられるのだろう、定年後への準備と覚悟をサラリーマンに説く内容になっている。冒頭、いわゆる定年後研修で、

 

・年金額等老後の資産計画、管理

・配偶者との良好な関係

・体調面、健康面への留意

・自由な時間があるので趣味を持つ

 

 の説明があるが、これでは不十分だというのが著者の主張。著者が同年代や先輩たちの事例を調査してみると、多くの人が問題を抱え、特に孤独にさいなまれている人が多いという。(高齢者に限らないのだが)OECDの調査では、社会に接点を持たない男性の割合は21ヵ国中最大の約17%、平均の6%のおよそ3倍ある。

 

 定年後も家庭内管理職と化して熟年離婚騒ぎになったり、地域社会と断絶してコミュニティで孤立してしまう例は非常に多い。これについては、僕は日本型の雇用慣行が影響していると考える。あまり転職をしないということもあるが、日本型のメンバーシップ雇用で階層がはっきりしている社会だと、皆が平等な立場で意見交換をすることが少ない。

 

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 だから定年後のコミュニティ(あるいは家庭)で、現役時代の要領で物事を進めようとするとコンフリクトを起こすのだ。僕の知っている米国型企業では、階層は3つしかない。TOP、Management、Non-titleである。各階層の中では、ベテランも専門家も新人も、同格で意見を戦わせる。そういう議論のプロセスを経験していないのが、都会の(特に大企業の)サラリーマンたちである。

 

 業界団体の会合やマンションの理事会などの経験があれば少しは救われるのだが、そういう人は多くはない。筆者のいろいろなアドバイスは貴重だが、日本型の雇用システムが変わらないと、これからの「孤独で不幸な定年後」は減らないだろう。

 

 本書の中に作家の森村誠一先生の金言「60~70歳は本当に実力が発揮できる年齢」というのもあり、著者は60~74歳を「黄金の15年間」と呼んでいます。僕ももう1/3ばかり過ぎてしまいましたが、この期間もっと楽しみますよ。