新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

主張の9割に異論はなく

 本書は2021年秋、自民党の総裁選挙を戦うタイミングで出版された、総裁候補の一人高市早苗衆議院議員の政策書。この時の総裁選には敗れたものの、党の政調会長に就任、今回の内閣改造では焦点の経済安保担当相となっている。「サナエノミクス」こと高市議員の日本経済強化計画が描かれている。

 

 僕自身総務大臣としての著者に、何度かお会いしている。キーワードはDXとサイバーセキュリティだった。本書にも、その時の議論をうかがわせる項目がいくつもある。特徴的なのは「危機管理投資」という考え方。これが、エネルギー政策、パンデミック対策、防災、中国リスクへの懸念、サイバーセキュリティ強化などの諸施策に反映されてくる。総論として、9割は僕らの考え方と一致している。

 

        

 

◆エネルギー

 自然エネルギーにも負の部分(例:太陽光パネルの環境問題)があり、原子力の平和利用は欠かせない。安全な<SMR型>を配備し、<核融合炉>のR&Dを進める。

 

◆産業技術

 半導体、ロボット、素材産業など日本の強い部分を伸ばし、研究開発としてはAI、量子技術、電波技術などに注力する。

 

◇外交・安全保障

 経済安全保障として、重要産業に外資規制を行い、重要技術研究を一括して把握できる体制を整える。インテリジェンス機関の設立と、国際標準への関与を強める。

 

◇地方創生

 新しい働き方(リモート)の導入、地域社会のDX、地産地消型エネルギーの確保の3本柱を推進する。

 

◆サイバーセキュリティ

 政府も企業も、コストではなく投資と見る、中小企業や個人に対する啓発、IoT機器などにもペネトレーションテストをかけることを実施する。

 

 特に最後の点については、憲法21条の通信の秘密についての検討が必要だとある。税制については<給付付き税額控除>に意識があるようだ。本書ではほとんど触れられていない憲法論、そこだけが少し気がかりですが。