新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

兵は詭道なり

 孫子の兵法にこのような言葉がある。人類の歴史に戦争はつきもの、その始まりの頃から「戦いは騙し合い」だったということだ。これはサイバー戦争の時代となった今でも変わりはない。本書には詳しく語れば1冊の本になるエピソードが、多数詰め込まれている。例えば、

 

・日本軍のパレンバン空挺降下時の欺瞞

・ドイツスパイを捕獲して二重スパイに仕立てた英国情報部

・連合軍カレー上陸をヒトラーに信じさせた心理作戦

ソ連侵攻前にスターリンを騙し切ったヒトラー

テト攻勢で敗れたベトコンが宣伝戦で戦略的勝利を得た方法

レーガンのSDI計画に振り回されたソ連の凋落

・米国中枢に入り込んだイスラエルの大物スパイ「MEGA」

 

 などである。ノルマンディ上陸作戦の前に、連合軍は大々的な欺瞞作戦を展開する。カレー上陸作戦書を持たせた将校の死体を海に流したり、テムズ川河口に大量のはしけを配備、パットン将軍の「アメリカ第一軍団」の準備状況を見せつけた。用意された戦車は風船で作ったダミーである。この暗闘については、ケン・フォレットの小説「針の眼」でもリアルに描かれている。

 

https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2019/10/25/000000

 

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 僕が面白いなと思ったのは、ソ連は発足当時(1918年!)から「TRUST」という名前の欺瞞作戦を続けていたことである。発足の目的は国外に散った反共産主義革命勢力(いわゆる反動)をあぶり出して殲滅することである。「TRUST」は周辺国に、

 

共産主義革命は行き詰まり、経済は破綻寸前

・農民は食料を抱え込み、軍隊の叛乱もそう遠くない

 

 との欺瞞情報を流した。さらに自分たちは共産党秘密警察から逃れている思想家集団ゆえ「信頼」してほしいと各国政府にも訴えかけた。実際拘留されている反共産主義勢力の幹部を脱走させることまでした。

 

 これがスターリン時代ならうなづけるのだが共産主義の理想を求めていたレーニントロッキーらの時代だったのだから、ソ連という国を「信頼」するのは難しいと改めて思わせられた。

 

 サイバー攻撃が高度化しているが、防御法も進歩している。「Deception」という手法は、攻撃者を罠に誘い込み妨害されているように思わせながら偽情報をつかませることだ。今は企業レベルでも「兵は詭道なり」を勉強するべき時代になりましたね。