新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本のベンチャー事情2019

 本書の冒頭、サッカー選手本田圭佑が競技をしながら、多くのベンチャー企業に投資している「エンジェル」としての活動が紹介されている。彼だけでなく有名なスポーツ選手・タレントらも投資家として、ベンチャー企業を支えている。

 

 実業家で資産家のイーロン・マスク孫正義から一般サラリーマンまで、多くの「エンジェル投資家」がいるが、米国の年間300億ドルの規模に比べ、日本では40億円ほどにしかならない。しかし年々、拡大はしているとある。

 

 個人で直接ベンチャーの投資するケースでは、俗に「千三」と言われほとんどは回収できない。しかし当たれば膨大なリターンがあるので、資産運用のポートフォリオの一環として投資(投機?)する一般人もいるという。

 

 本書は、「個人で直接」のほか、ベンチャーキャピタル(出資者を募って投資)、企業ベンチャーキャピタル(大企業資金を投資)、クラウドファンディング(寄付型・購入型・株式型・融資型)などの仕組みや実態を紹介している。後半では日本のベンチャー事情が綴られていて、こちらの方が興味深かった。

 

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 とかくベンチャー企業が生まれにくい、育ちにくいとされる日本産業界だが、「Global & Digital」の潮流に乗って、着実に変化は来ているようだ。まず外国人が日本で起業するケース。

 

・米中に比べ、経済規模に比べ起業家が少なく、過度な競争をしなくていい。

・日本の起業家は「ムラ社会」、成功者のモデルを面子もなく真似る中国とは違う。

 

 また大学発ベンチャーの支援機能も充実してきて、東大・早大・慶大の例が挙げてあったが、在学中に起業するのも珍しくない。「スタートアップの聖地」と呼ばれる地域も増えてきた。五反田、渋谷、本郷、茅場町、にしなか(大阪)等々。

 

 ベンチャー企業で働く人の平均給与は710万円、一般企業のそれより100万円以上高い。これは従業員の年齢が比較的若いことを考えると、高給と言えるだろう。一方ベンチャー熱が過熱している傾向もあって、話題先行で資金ばかりが集まり出口が見いだせないケース、成長を優先するあまりガバナンス・コンプライアンスに欠けるケースも少なくないとある。

 

 優れた起業家をどうやって見分けるか、キャピタリストの意見は「まず人物、次にアイデア、最後が市場」だった。既存市場を前提に考えないということだろう。問題を孕みながらも、彼らにはもっと成長して欲しいですね。