2017年発表の本書は、5人の知の巨人にサイエンスライターの吉成真由美氏がインタビューしたまとめたもの。昨日紹介した「知の逆転」の後日談とも言え、テーマは「人類とテクノロジーの関係」である。登場する巨人は、
ノーム・チョムスキー(数学・言語学・政治学者)
レイ・カーツワイル(発明家・未来学者)
マーティン・ウルフ(経済ジャーナリスト)
ビジャルケ・インゲルス(建築家)
フリーマン・ダイソン(数学・物理学者)
テクノロジーは指数関数的に発展する。問題はそれを人類が使いこなせるかどうかで、巨人たちの意見も分かれている。使いこなせるとすれば、
・自然エネルギーの供給量は2年で倍になる。必要量を得るにあと6回倍になればいい
・デジタル技術で人間のバックアップも可能になり、医療技術で寿命も半永久的になる
・3Dプリンタで、建築物も衣料品も、なんでも自由に作り出せる
逆にリスクとしては、
・分散型のシステムが進んで反政府(アナーキズム)がはびこり、破局が訪れる
・インターネットそのものが目的を持ち、世界を支配する可能性もある
が挙げられていた。その他にも興味深い意見があり、
・少ないデータでAIが成長する技術開発 ⇒ 醜いデータ覇権争いが無意味に
・機密の多くは自国民に情報を伏せるため ⇒ これが政府への不信につながる
・グローバリズムとテクノロジー発展で企業は国内投資を渋るようになる ⇒ 日本の企業内留保増の理由
・気候変動モデルには疑義があり、脱炭素に使うカネは被災地再開発に廻すべき
という。サイエンス(&テクノロジー)は人類の未来を切り開くが、それだけでは(起きてくる問題の解決含め)充分ではない。「99%デモ」がネットで拡散して大規模なものになっても、結局何も変わらなかった。新しい時代に合わせて人間も、生活様式も、考え方も変えなくてはいけないのだという。
ただ変化の方向性については、5人の巨人に一致は見られませんでした。前著より多様性が増したのかもしれません。