新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

サラリーマンのサバイバル術

 本書の巻末に、筆者(成毛眞)の略歴がある。1979年中大卒、メーカー、アスキーを経て1986年Microsoft入社、日本法人社長となり2000年退社。(株)インスパイアを設立して社長就任、2008年取締役創業者、となっている。僕自身も関わりを持った、同年代の企業人である。最初に会ったのは、筆者が日本Microsoftの営業部長だったころ。PCもどきのちょっと変わった機器の製品企画をしていて、当時の「MS-DOS」のカスタマイズ交渉をした時だった。

 

 次に会ったのは、2000年代前半。小泉内閣のIT戦略のお手伝いをしていて、筆者もそれに絡んでいて仕事を一緒にさせてもらった。インスパイア社の後任社長とは、今でも付き合いがある。デジタル業界を引退するとき「俺は農業をやるんだ」と言っていたのを思い出す。確かに、新しいことにチャレンジするのが大好きな人である。

 

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 本書は40歳代のミドルエイジ相手に、「会社人間を早く見切りなさい」と忠告している書である。どんな会社人間が危ないかと言うと、

 

・大企業の正社員なので、当面安泰と思っている。

・能力開発セミナーなどにも顔を出し、自己研鑽しているつもり。

・60~70歳までのローンを組んで、広くて通勤至便の家に住む。

・投資などファイナンスの経験も能力もない。

・旅行を含めて海外経験が希薄。

・デジタルリテラシーがない。

 

 のようでは、今後日本社会が激動する中で生き残れないぞというのが筆者の主張だ。大企業・東京在・有名大卒等々のプライドを捨てて、自分の生き方を探せとある。地方には後継者がいない優良企業が一杯あるとして、熱海の温泉旅館が例に挙がっている。その例だけは僕も納得できないが、主張は理解できる。他にも、

 

・好きなことを趣味にして10年くらいやってみれば、相応の副業になる。

・誰も目を向けない様な業界で、1円起業をして機会をねらえ。

 

 などと、ハッパをかけてくれる。面白かったのは、筆者自身それほど英語がうまいと思っていないこと。ビル・ゲイツとやりあうために必死で勉強したが、業界・専門の会話以外は苦手だとある。確かに、筆者が英語で話しているのは聞いたことがない。きっと上手いはずだと、僕が勝手に思っていただけだ。

 

 本書を手に取ったサラリーマン諸氏に申し上げたい。本書の90%は真実です。しかし残りは筆者にしかできなかったこと、決して真似されませんよう。