2020年発表の本書は、会計学者である八田進二氏が不祥事があるとすぐに設置されるようになった「第三者委員会」の実態を暴いたもの。よく耳にする言葉なのだが、その実態は僕もあまり知らないので、本書で勉強させてもらった。
コーポレート・ガバナンスとかコンプライアンスといったグローバル(US?)スタンダードな言葉と共に語られるのが多いので、この種の委員会は国際的なものだと思われやすい。しかし実際はバブル崩壊の山一證券の事件対応で生まれた、まるきりドメスティックな仕組みだという。山一の事件あるいはそれ以降の案件も、米国スタンダードなら社外取締役が対応すべきだが、それが機能しないので使われた「苦肉の策」だとある。
近年社外取締役を置くのは普通になりその人数も増えているが、まだまだ米国企業のように「株主の利益代表」としての責任権限を十分果たせているわけではない。一方で第三者委員会も頻繁に使われるようになって玉石混交、いや形骸化して単に「追求から逃れるための方便」に成り下がっているケースの方が多いという。
本書では10の事件の第三者委員会(もしくはそれに類したもの)の活動や報告内容を紹介し、21の事案での委員会の成果をA~Fの5段階評価をしている。2019年に起きた厚生労働省の毎月勤労統計の不正事件については、委員会が全く機能せず全評価者がF(不合格)と評した。詳述された10の事件で、唯一高い評価を得たのが、雪印種苗の種苗法違反事件(2018年)。過去の社内調査を覆し、新たな不正も見つけるという成果を揚げている。
・企業等からの独立性した構成員だけで成り立ち
・徹底した調査と専門家による知見で原因を分析
・必要に応じ具体的な再発防止策等を提言
するものであるべしとしている。ただこれまでの委員会を筆者が分析したところ、
・多くは会計偽装なのに、会計士は滅多に委員に含まれない。
・委員の多くは弁護士で、その報酬は開示されることは少ない。
ので、弁護士事務所の新しいビジネスと化していると警告する。本来は事件で被害を被るステークホルダーに対して責任を負うべき委員会が、費用を出してくれる問題組織に向いてしまう傾向があるという。
問題企業TOPの「禊のツール」と化した第三者委員会の実態、生々しく解説してもらえました。