本書は、先月「スノーデン日本への警告」を紹介したJCLU(公営財団法人自由人権協会)が、スノーデンらを招いて行ったセミナーの第二弾。前著から1年、2017年のセミナーを書籍化したものである。今回大きく取り上げられていたのが「XKEYSCORE」という市民監視システムのデータが、米国政府から日本政府にも提供されていたのかという疑惑。
米国では9・11テロ以降、安全のためには要注意組織のデジタル監視を強化した。いわゆる「事前捜査」も行われたが、そのような事実が暴露されても市民は「プライバシーよりセキュリティ」として、大きな反対運動にはならなかった。しかし9・11のインパクトが薄れ、イラクやアフガンでの闘いに疑問が出てくると、市民へのデジタル監視を批判する議論が出始める。
それに拍車をかけたのが、スノーデンの暴露。他に機密文書も出て来て、大量監視システム「XKEYSCORE」の存在が明らかになった。米国では監視システム運用の見直しが始まったのに、その供与を受けていたとされる日本政府は「当該文書の信頼性に疑いがある」として回答を避けた。
パネリストのひとり、プライバシー権に関する国連特別報告者ケタナッチ氏は、監視システムの保護措置について、次の5項目が求められると言っている。
1)法による監視政策の規定
2)独立機関による承認
3)大量監視の禁止
4)監視の事後的検証
5)透明性・情報公開
テクノロジーの発展で、政府が大量の個人情報を収集と大規模監視を行えるようになり、国家と国民間の情報格差が急拡大した。これは国民主権の民主主義を根幹から揺るがしていると、パネリスト達は言う。
ちなみに表紙にある「米国は日本のインフラを混乱させるマルウェアを仕込んだ」のは本当でしょう。ただ、今米国が日本を混乱させる意味はありません。動機+機会がないとそれは現実になりませんよ。