新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本についての意識、2004

 昨日「日本外交現場からの証言」で、1993年までの日本外交状況を現役官僚が記した書を紹介した。これが公式なものとすれば、2004年発表の本書は日本外交についての「10年後の民間からの評価」とも言えるだろう。主要な7ヵ国について各々の専門家(ジャーナリストや国際政治の研究者)が、メディアの取り上げ方や市民の反応について記述している。

 

 時期的には、小泉改革が始まったころで、イベントとしては日韓W杯が行われていた。米国の9・11テロに始まる戦争がたけなわで、中国は鄧小平路線での成長を続けていたが、まだ米欧諸国の懸念材料になってはいない。

 

1)英国

 サッカー好きな市民の国ゆえ、W杯で日本の認知度は上がった。しかし太平洋戦争当時の捕虜虐待や捕鯨問題によって「残虐でずるがしこい国」との印象は拭われていない。「日英同盟」など市民の記憶にはないが、ハイテクトイレには驚嘆している。

 

2)フランス

 しばらく前は「経済大国」としての関係強化(例:トヨタの工場誘致)に励んでいたが、中国の台頭で「単なるアジアの1国、ちょっと変わった文化の国」へと意識が変った。

 

3)ドイツ

 以前は日本の自動車等輸出産業への警戒が強かったが、「失われた10年」で警戒は解けた。今は巨額な財政赤字への懸念を持っていて、過労死などの社会問題に注目が集まっている。

 

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4)米国

 一応「日米蜜月」となっていて「日本叩き」や「日本異質論」はなくなったが、実態は「日本パッシング」。英国同様商業捕鯨には厳しく、戦後処理問題(小泉首相靖国参拝等)にはセンシティブ。

 

5)アラブ諸国

 日本の報道も少なく市民の関心も低い。東京の神秘とハイテクの国・・・程度のものだ。ただ米国への対抗心から「ヒロシマの被害を受けた国」として日本のことを伝えるくらい。

 

6)中国

 80年代より日本報道は減っている。知っている日本人の3位に山口百恵が入っているのが証拠。1位は小泉首相だが、理由は靖国参拝。侵略者に打ち勝った共産党の宣伝もあって、反日感情は大きい。

 

7)韓国

 反日感情が高いのは同じ。日本を見習うべしとの声もあるが、それは「消費される文化」としてだけ。ただ関心は非常に高く、報道される外国情報では日本のものがダントツで多い。

 

 本書の時代から20年弱が経ちました。ここに書いた内容は、容易には変わらないもの。重々認識しておきましょう。