2021年発表の本書は、この2日「未来の年表」2冊を紹介したジャーナリスト河合雅司氏の、世界版少子化問題を分析した書。「静かな有事」と言われるこの問題、実は日本だけのことではない。今年80億人に達したという総人口、国連の推計では2100年に110億人に達するともいうが、厳しい見方では2064年に97億人でピークに達し、以後減少に転じるという。筆者はこれを「人類絶滅への曲がり角」と表現した。
気候変動・資源の枯渇・食糧や水の不足などの国際課題の原因は、やはり人口が増えすぎたことにある。だから人口減少は悪いこととは言い切れないが、経済の担い手が減り、世界市場が縮小し、高齢化で年金不足が発生するなど課題も多い。もちろん国によって、事情は異なる。日本については「未来の年表」で語りつくされているから、外国の事情を見て行こう。
■2020~2050年に、20%以上人口が減る国
■同期間に10%ほど減る国
イタリアやポルトガルなどの欧州諸国、ドイツやロシアの減少幅はこれより少ない
◇英国
移民のおかげで微増程度と思われる(ただしBrexitの影響は考慮されていない)
◇米国
WASPは減少するのだが、移民のおかげで総人口は増加、2050年に3.8億人に
◆劇的に増加する国
サハラ以南のアフリカ諸国、北アフリカと中東諸国では人口が増え続ける。2050年にナイジェリアが4億人、エチオピアとコンゴが2億人国家に
◆中国
現在の14億人をピークに、2050年には11億人ほどになる。ただ出生率1.3と言う発表は怪しく、実際はもっと減るかも
米中人口戦争では、この30年程を乗り切れば米国が優位に立てると筆者は言う。改めて、日本の人口問題は、出生率の高い国からの移民によるのが適切と思わせてくれる書でした。