新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ドイツの巨砲を破壊せよ

 1957年発表の本書は、冒険作家アリステア・マクリーンの第二作。デビュー作「女王陛下のユリシーズ号」は、北海での英国海軍軽巡洋艦の闘いと死を描いたものだったが、今回の舞台はエーゲ海。トルコに近い架空の島ナヴァロンでの、連合国軍人の破壊工作行が綴られる。

 

 ニュージーランド軍のマロリー大尉は、世界的に有名な登山家。今は北アフリカ・地中海戦線で闘っている。ロンメル暗殺を企んだり、クレタ島での破壊工作が主任務だ。彼は突然カイロの英軍司令部に呼び出される。(史実とは違うが)エーゲ海に進出したドイツ軍がナヴァロン島に建設した要塞とその巨砲(戦艦ビスマルクの主砲クラス:30cm砲)に、連合軍艦艇が叩きのめされているというのだ。

 

 ナヴァロン島の北、ケロス島には英軍人1,200名が孤立しており、撤退させたいのだが、その巨砲ある限り救出できない。英軍は重巡洋艦で砲撃を試み、空挺降下をさせ、重爆撃隊も投入したがいずれもさんざんに叩かれてしまう。

 

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 残された道は、ドイツ軍が上陸不可能と考えている島の南岸の絶壁を登ること。そのために、登山家マロリー大尉が指揮官に選ばれたのだ。海軍の若手登山家スティーブンス大尉、ギリシア軍人のアンドレア(元中佐)、爆発物の専門家ミラー伍長、メカ・電信担当のブラウン兵曹の5名が全ての戦力。島には住民もいるが、ドイツ軍の過酷な統治があるので置きスパイの2人以外に助力を求めてもいけないという条件で、マロリーたちは出発する。

 

 それからは冒険小説の白眉で、艦艇の故障・ドイツ軍哨戒艇・暴風雨・切り立つ崖の登頂・ドイツ山岳歩兵の追跡・予定より繰り上げられたタイムリミット・裏切者の存在と、ありとあらゆる苦難がマロリーらを待ち受ける。不死身のアンドレアはともかく、ぐちっぽいミラー伍長も、ユーモアたっぷりに苦難の行程を乗り越えていく。

 

 映画化もされ大ヒットし、作者の名声を確立させた作品である。

 

マロリー大尉:グレゴリー・ペック

アンドレア:アンソニー・クイン

ミラー伍長:デービッド・ニーブン

 

 というキャスティングだった。この作品は子供の頃に「世界ミステリー全集」で読み、50年後に単行本を手に入れたもの。当時よりは軍事知識があって、より面白く読めましたね。