新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新鋭戦車4両対生身の歩兵たち

 本書はスティーブン・スピルバーグ監督の「Saving Private Ryan」の脚本を基にしたノーベライゼーション。「Battman」の原作や多くの映画のノーベライゼーションをした、作家マックス・A・コリンズの作品である。

 

 ノルマンディ上陸作戦を描いた大作映画のひとつで、主人公ミラー大尉(第二レインジャー大隊中隊長)を名優トム・ハンクスが、ライアン二等兵(作中では前線昇進したのだろう上等兵:101空挺部隊)を若手のマット・デイモンが演じた。

 

 オマハ・ビーチに上陸したミラー大尉のC中隊は、断崖上からのドイツ軍の猛攻にさらされ甚大な被害を受ける。映画同様、このあたりの描写は実に生々しい。激闘の末ドイツ軍を撃退するのだが、中隊戦力は半分以下になってしまった。傷心の大尉にアイゼンハワー将軍からの特命が下る。1個分隊の戦力を持って内陸に先行し、空挺降下して行方不明になっているライアン二等兵を連れ帰れというのだ。

 

 ノルマンディでライアンの2人の兄が戦死、さらに先週ニューギニアでは長兄も戦死している。4人兄弟の末っ子ジム・ライアンだけは無事に母親のもとに帰せという軍広報を意識した指令である。この部分は実話で、ナイランド兄弟の戦死と101空挺部隊のナイランドを救出したのは事実である。

 

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 大尉は副官役の軍曹、BAR手、狙撃手、衛生兵らC中隊選り抜きの兵士と、フランス語の分かる優秀兵が死んでしまったことから中隊通訳のアパム伍長の合計8名で内陸に向かう。途中何度もドイツ軍に遭遇するが、軍曹の統率やテネシー人の名狙撃手の活躍で危機を乗り越える。2名の兵を失いながら、ついにライアン上等兵を見つけるのだが、彼の部隊は全ての士官を失っており「橋を守らないと」と救出を拒否する。大尉はライアンたち空挺隊員と戦うことを決め、ドイツ軍を迎え撃った。

 

 映画ではクライマックスに登場する武装親衛隊は、TiegerⅠが2両、Marder自走砲とFlak20mm4連機関砲が1両づつだった。しかし小説ではTiegerⅡとPanterが2両づつと強化されている。映画以上に、ミラー大尉たちは苦戦を強いられるから、読者としてはハラハラドキドキなのだが、どうして映画もこうしてくれなかったのだろう。

 

 まあ予算の問題かなとは思いましたが、映画のTiegerⅠ戦車もど迫力でしたし、そこは納得していますよ。