先月「自民党失敗の本質」を紹介した。第二次安倍~菅政権の官邸主導政治の功罪に迫る、8名の関係者へのインタビュー本であった。
アベ政治とは何だったのか - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
本書(2021年発表)はほぼ同じ時期の官邸政治について、朝日新聞デジタルに連載された「未完の長期政権」を加筆修正したもの。冒頭、官邸主導への道の解説がある。省庁縦割りで改革が進まず、危機管理(例:阪神淡路大震災)にも問題があるとして、官邸に権限を集める動きがあり、4つの道標があったという。
1)1994年の小選挙区導入、党公認を得ないといけないので党に権力が集まり、政治家が小物になる。
2)1997年に橋本行革、経済財政諮問会議を置き、首相補佐官も増員した。
3)2009年は民主党政権、政治主導を掲げて事務次官会議を廃止するなどした。
4)2014年の内閣人事局設立、官邸が高級官僚の人事権を一手に握った。
外交は安倍総理、内政は菅官房長官が事実上全てを決めて実行に移したのが第二次安倍内閣。上記4つの道標を経て弱められた各府省の独立性は、非常に弱体化していた。2017年親中派の二階幹事長が習大人に手渡した安倍総理からの親書は、いったん総理まで含めて了承された内容(対中牽制)が、今井秘書官らの手で書き換え(対中宥和)られていた。外務省は蚊帳の外におかれたわけだ。
内政でも「法の番人」たる内閣法制局長官が集団的自衛権の解釈について抵抗すると、人事を発動して解釈容認派の人物に交代させている。これらの例から官僚は官邸を忖度し、積極的な提案を持って行かなくなった。官僚ではあっても親元(経産・国交等)に戻らないつもりの補佐官たちが、総理・官房長官の意を受けて意思決定をし、実行に移していったとある。
巻末の有識者のインタビューでは、官邸主導は真に卓越したリーダーでしかうまくいかない。安倍総理は普通レベルだったとあります。卓越したリーダーの例としては、橋本龍太郎・小泉純一郎の名前が挙がっていました。異論もあろうかと思います。