新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

大きくなればなるだけ弱くなる

 2021年発表の本書は、以前「戦争にチャンスを与えよ」「中国4.0」を紹介した、CSIS上級顧問エドワード・ルトワック氏に奥山真司氏がインタビューしたまとめたもの。前2作と同様の建付けである。軍事史・戦略史に詳しいルトワック氏は、中国の習政権は追い詰められていると主張する。

 

 鄧小平の改革開放路線で、平和裏に経済的に発展していった(中国1.0)が、リーマンショック後対外強硬路線(中国2.0)に転じ、相手を選んで攻撃するようになった(中国3.0)の時代を経て、今は戦狼外交(中国4.0)になったという。これが他国の反中国ネットワークを強固にさせて国際的に孤立の道を歩んでいるが、中国共産党政権はその危ぶなさに気付いていないと著者は主張する。

 

        

 

 弱者は強者に従うはずだが、日本などがそうならないのは中国の強さが不十分だからと誤解している。例えば海軍力も、続々新鋭艦を建造・配備しているが、それは軍事目標を増やしているにすぎず、戦争の役には立たない。そうりゅう型潜水艦12隻で、100隻ほどは沈めることができる。警戒すべきは海警局の巡視船くらい。

 

 習大人は不安定な独裁体制の頂点に座っていて、躓かされるのが恐ろしくて仕方がない。2020年にオーストラリアに対して中国政府が突き付けた14カ条の不満(*1)は、これが躓きの原因になると中国が思っていることを吐露している。

 

 大きくなればなるほど弱くなる中国だが、台湾海峡での暴発はあり得る。そんな時日本はどうすればいいかは、冷戦時代のスウェーデンが参考になるとある。ソ連フィンランドに侵攻することに備え、フィンランドは防御を固めていたが、同盟関係にないスウェーデンも非公式な軍事支援や後詰めの戦力配備を行っていた。

 

 習大人は共産党政権における「ラストエンペラー」となって果てるというのが戦略家としての予測でした。鵜呑みにはしませんが、参考情報として頂いておきます。

 

*1:「我々を敵として扱うなら敵になろう」――中国が豪州に突きつけた「14の不満」を一つ一つ点検してみた(西岡省二) - 個人 - Yahoo!ニュース