昨日東日本大震災当時の官邸内部のことを官邸内部の視点で示した書を紹介したが、本書には同じことを官僚の目で見たことが書かれている。ただ著者の古賀茂明氏が言いたかったことは、官邸内の迷走よりもそれを生んだ官僚たちの生態(筆者の言う独特のメンタリティ)である。
霞ヶ関の中でも比較的自由な気風のあった通産省に入省した筆者は、官僚によくある2つのタイプ、
・なんとしてでも出世したい
・国のため国民のため
のどちらでもなく、やりたいことを探し、あるべきことを学んできた。OECD出向を含め海外事情に精通するにつけ、日本の現状や未来に危惧を抱いて、当たり前のことをしようとしたと本書にある。しかしそれは省内のメンタリティとは相いれないことで、外部からは「改革派官僚」と評価されたが省内では孤立していく。
政権交代が起き、霞ヶ関改革を掲げた民主党の仙谷官房長官に見いだされた筆者は改革に尽力するが、民主党の改革は腰砕けになり彼自身も居場所を失う。民主党の問題点は、知識も能力もなく、政治主導にこだわり、結局「事業仕分け」のような実のないパフォーマンスで終わったことだという。
特に「総理主導」をはき違えた菅総理は、東電福島第一の事故の折に、
・スキャンダル等で支持率低迷の今、震災をチャンスととらえた。
・自民党政権のように官僚の好きにはさせない、全部オレが決める。
・現地視察で指導力をアピール。
という行動に出たという。結果として官邸スタッフを混乱させ、事態の悪化を招いたと筆者は言う。経産省も問題で「早期に海水注入」を唱えながら、東電に反対されると腰砕けになった。それを押し返せなかったのは、東電が最良の天下り先だったから。以降、本書は官僚の負のメンタリティを連綿とつづる。僕はそこまで官僚の事をあしざまに言わなくてもいいと思うのだが、まあ内部の人の言うことは尊重しておこう。
面白かったのは巻末に、現状課題とこれからどうあるべきが書いてあって、この多くには賛同できる。曰く、
・ちょっとかわいそうくらいの人は(公助で)救わない。
・官僚を筆頭に、守られ過ぎている人たちがいる。
・農業はその最たるもの、助成金でジャブジャブだ。
・年金支給は80歳からでいい。
・潰れるべき企業を、政府が無理に助けている。
・真に優れた企業は国籍を捨てる。
今も筆者はオピニオンを出し続けています。どこかで意見交換できればと思います。