新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

闘えるようにするには

 2日間に渡り紹介した書で、日本の防衛力の問題が明白になった。市民が防衛に十分な関心を持たないので、政治も行政も本気にならない。闘わないことを前提として、自衛隊は活動してきた。一部メディアや野党の反対コールに、政府全体が及び腰だ。それではどうしたらいいのか・・・と思って手に取ったのが本書(2021年発表)。

 

 外務省出身で国家安全保障局次長でもあった兼原信克氏が、陸海空の「平成の名将」と呼ばれる人たちを集めた座談会のレポートである。

 

・岩田清文 元陸将、陸上幕僚長

・武居智久 元海将海上幕僚長

・尾上定正 元空将、航空自衛隊補給本部長

 

 中国はもちろん、ロシアや北朝鮮の脅威を具体的に分析し、自衛隊に欠けているものを徹底的に明示する内容。核共有から継戦能力、国内軍事産業の衰退、技術イノベーション阻む学術会議、運用を鑑みない兵器調達・開発、国産兵器の輸出問題、FMS(対外有償軍事援助)ベースの兵器導入、統合作戦部署の不在、セキュリティ・クリアランス制度の欠如などが論じられている。

 

        

 

 最後に提言として、10項目が挙げられていた。

 

1)日米首脳会談で核問題を取り上げよ

2)総理決裁の統合軍事戦略を策定し、防衛大綱を防衛戦略に格上げせよ

3)台湾有事への対応を始めよ

4)国の安全保障に科学技術予算を活用せよ

5)国防の不可欠な機能として防衛産業を位置づけ、育成・活用戦略を策定せよ

6)防衛大臣の下に装備開発委員会を設置せよ

7)統合幕僚監部に「統合司令官」と常設統合司令部を設けよ

8)自衛隊の軍令系の将を格上げして大将とせよ

9)有事対応の民間サイバーセキュリティを強化せよ

10)有事対応のシーレーン防護に取り組み、エネルギー安全保障を強化せよ

 

 もはや民生技術と軍用技術に差はなく、デジタル技術も最前線に立っている。僕と同世代の「平成の名将」たちの提言、肝に銘じておきましょう。