新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ハルキウの「狐」戦車隊

 2017年発表の本書は、昨年「北朝鮮急襲」を紹介した、トム・クランシー&スティーヴ・ピチェニック原案の<新オプセンター・シリーズ>。扶桑社から翻訳出版された4作目にあたる。実際の執筆は、ジェフ・ローヴィンとジョージ・ガルドリスキだ。

 

 舞台は、今年実際に火ぶたが切られたウクライナ東部。2014年にロシアがクリミアを占領、東部ドンバス&ルハンシク州でも親ロシア派と、ウクライナ軍との抗争が続いている。そんな中、米国の元ウクライナ大使だったフラナリーは、かつてウクライナのスパイとして解雇した部下から協力を依頼される。

 

 ハルキウに近いロシアの基地に、イェルショーフ大将の機甲部隊が集結しているらしい。米国のインテリジェンスで掴んでいる機甲部隊の情報をくれというのだ。しかし、その直後、スパイたちはニューヨークでロシアの暗殺者に殺され、フラナリー自身にも魔手が伸びる。

 

    

 

 ポール・フッド長官から<オプセンター>を引き継いだチェイス・ウィリアムズは、フラナリーを保護するとともにウクライナで進行している計画がどんなものか知ろうとする。ハルキウに近い戦車の廃棄場では、ウクライナの「狐」こと戦車戦の英雄クリモーヴィチ少将が、50両ばかりの戦車隊を極秘裏に組織していた。ウクライナとロシアの間に戦端が開かれそうだと考えたウィリアムズは、指揮下の即応部隊をヘルソンからドンバスに送って衝突を阻止しようとするのだが・・・。

 

 ウクライナ軍がVRを使って戦闘シミュレーションをするシーンがリアルで、HUMINTの他サイバー部隊も活躍する。さすがはクランシー一家、2022年のウクライナ紛争を予言したような内容になっている。

 

 ウウクライナ東部は、平坦で緑も多い穀倉地帯。しかし政治的には暗黒地帯(原題:Dark Zone)だというのが作者らの主張らしい。それは今、現実になっていますね。