本書は、国際政治学者藤原帰一教授の近著・・・と思って買ってきたら、2003年発表の書のリメイク(2022年出版)だった。しかし不思議なことに、論じられている国際情勢やイデオロギー対立、戦争と平和などは、現在にあてはめても十分意味がある。
冒頭、戦争について3つの考え方が示されている。
1)悪い奴(国)が戦争を起こすので、これを除くべし
2)戦争に良いも悪いもない。現実主義として、戦争も政策の一部にすぎない
3)武力がある限り戦争のリスクはある。武力を失くしていくべし
国際政治学では、2)が主流。筆者もその観点から、冷戦終結・民主主義・核兵器・日本国憲法などを論じてゆく。
米ソ(東西)冷戦は、欧州ではソ連の崩壊・東欧諸国の離反で終結した。しかしアジアでは形を変えて冷戦が残っている。レーガン政権の強硬姿勢がソ連を崩壊させたというのが定説だが、筆者はそうではないという。アフガン侵攻・東欧諸国の負荷・軍拡競争で、もともと行き詰まっていた社会主義経済が破綻したのが理由。この時大きな実被害が無かったことで、欧州は反省をしなかった。そのツケが今に巡って来たということらしい。
米国を始めとする民主主義国家は、第二次世界大戦で日独伊を民主化させたことに味を占め、他の国にもそれを広めようとして挫折している。2003年の時点では、ベトナム・イラク・アフガニスタンなどが例に挙げられているが、その後20年でもっと多くの国で民主化の働きかけは頓挫している。
日本国憲法については、確かに押し付け憲法だが(9条の)改正には、筆者は反対。戦力の明記をすればタガが外れて、一気に軍事力拡大の方向に動きかねないという。もちろん非武装中立などは幻想だが、いかに(核も含めた)戦力を削減できるかが外交の構想力だという主張。
「悪い政府は内側から倒すしかない」とありました。今のロシアの暴挙にも、このスタンスでの対応が重要ということでしょうね。