新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

道州制+二都構想

 昨日金子教授の「人を救えない国」を紹介したが、問題意識は共有できるとして、地域分散革命が解決策と言われても、経済学ならともかく政治学上は困るなと思った。そこで手に取ったのが本書(2019年発表)、著者の佐々木信夫氏は中央大学名誉教授(行政学)。現在の47都道府県の行政区割りは、300ある藩を「廃藩置県」してできたものだが、交通手段が徒歩や馬だった時代のものだという。

 

 高速道路や鉄道、空路の整備も進み、インターネット時代になった今、「廃県置州」をすべきとの主張。基本は道州制なのだが、東京首都州と大阪副首都州を加えたところにポイントがある。すでに「県」というものの弊害や矛盾が出てきているので、これを廃止すべきである。どんなことかというと例えば、

 

        

 

政令市は県の差配ではないが、県会議員は政令市から大勢出てくる

 ⇒ 神奈川県議105人中、67人が横浜・川崎・相模原各市から選出

・国と基礎自治体の中間にあって役目が見えない上に、情報流通の障害になっている

 ⇒ 大阪市大阪府に代表される多くの二重行政

 

 からである。国は防衛、外交などに徹しその他の行政は州に委ねる。筆者の記述にはないが、通貨も入るだろう。ある人は教育を入れろと言うかもしれない。州で税制など決められるから、貧しい州では所得税や固定資産税を下げて富裕層を誘致したり、法人税を下げて企業誘致もできるだろう。

 

 国の持っている資産を各州に売却することで、国の借金を減らし各州の州債に移し替える。州債は各州の考え方で償還するという故堺屋先生のアイデアも紹介されていた。各州の人口は、

 

・北海道州 534万人で経済規模はポルトガル並み

・東北州 900万人

・関東州 山梨含む首都圏、東京首都州を含めて4,300万人、経済規模はイタリアほど

・北陸州 長野を含んで730万人

・東海州 1,500万人

・関西州 大阪副首都州を含んで2,000万人

・中国州 750万人

・四国州 380万人

・九州州 1,300万人、経済規模も含めてオランダ並み

・沖縄州 150万人

 

 となり、各々世界市場で闘う手段があるという。堺屋先生の意見が出てきて、維新の会の施策が紹介されています。大阪の二重行政克服を全国に広めたいというお考えかと思いました。