新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「After COVID-19」の世界情勢

 昨日の「デジタル地政学」と共に、国際経済連携推進センターから送られてきた最新(2022年1月出版)の書。昨日ご紹介したように、この団体に友人が加わったことで僕にも縁ができ、送っていただいたものだ。

 

 この団体の研究範囲はデジタル分野に留まらず、国際政治学の領域をカバーしている。この2年間、国際社会を覆った最大の危機要因は「COVID-19」。これを識者たちは「グレート・リセット」と捉えて、本書にまとめた。意味は「パンデミックによって世界は変わった。地政学・地経学上も、もう二度と2019年の状況に戻ることはない」ということ。もともと国際社会が抱えていた課題を、「COVID-19」禍が際立たせたとある。

 

 発端となった中国は、禍を最小限に収めたことによって自信をつけた。特に米国の迷走ぶりを見て「民主主義なんて、大したことはない」と多寡をくくったようだ。米国の言う「Like-mindeed Country」は、全てパンデミックをうまく処理できなかった。ただ中国の強権的な政治は「一帯一路」構想の終点に近い東欧諸国に、疑惑の念をもたらした。

 

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 日本では「一帯一路」の弊害を東南アジアを対象にしてしか議論していないが、東欧諸国の中には中国が示した「16+1」構想から外れていく国もあるという。最初の離脱はリトアニア旧ソ連圏の小国ながら中国の強権的な進め方に反発してのことである。

 

 本書では、中国・米国・欧州の(昨日見たような)三国志的コンフリクトを予測しているが、象徴的なのはアフガン情勢だった。出版の半年前、米国がアフガニスタンから撤収するとして、タリバン復権を許した。

 

この国に合った統治の仕組み - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 これに関して、巻末に対談が載せられていたのが一番面白かった。

 

司会:袴田青山学院名誉教授

パネリスト:北岡JICA理事長、宮家キャノングローバル戦略研究所主幹、廣瀬慶應大教授

テーマ:激動する国際地政学と日本の対応~アフガン問題緊急座談会~

 

 日本では珍しい、時の人とも言える廣瀬陽子慶應大学総合政策学部教授が、旧ソ連の視点から見たアフガニスタン問題を論じていたのが興味を惹いた。

 

 この財団、付き合いは始まったばかりですが、なかなか奥深い活動をされているようです。まだまだ勉強させていただきましょう。