新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

21世紀最大の市民運動

 1997年の今日(7/1)、香港は中華人民共和国に返還された。中国の一部とはなるのだが、その後最低50年はこれまでの世界に開かれた都市である「一国二制度」が続くはずだった。しかし結果は、その半分も期間も経たないうちに、事実上併合されてしまった。

 

 2020年発表の本書は、2010年代の中国側の策謀とこれに抵抗する香港の(特に若い)市民の抵抗を記録したもの。著者の小川善照氏は、週刊ポストの記者。本書が「21世紀最大の市民運動」と名付けた若者たちの抵抗運動を、時系列に並べてみると、

 

◇2011年 中国本土並みの愛国教育導入を嫌った3万人以上のデモ

 

◇2014年 香港行政長官の普通選挙を拒否した中国政府に対する金融中心の占拠、いわゆる「雨傘運動」

 

 ここまでは「民主派」と呼ばれる、中国は一つでいいが、香港を民主化してその流れで中国全土を民主化することを目標としていた人たちの運動だった。

 

        

 

◇2016年 複数党派による主催者発表で11万人規模のデモ

 

 ここで「本土派」という新しい勢力が加わる。彼らは「本土はどうでもいい。香港を民主化する」と半ば独立を目指す武装闘争を始める。そしてついに2019年、香港へ逃亡した犯罪者を中国に送り返すことのできる「逃亡犯条例」を当局が施行しようとし、これに反対した103万人(主催者発表)のデモ隊が、立法府を占拠しようとして衝突が起きた。

 

 筆者は現場で拾った、若者(含むオタク達)の生の声を紹介している。香港返還後に産まれた若者は、英国に準じたパスポートは持てない。中国のものは論外としても、香港パスポートは行政府の意向で私権が制限される。

 

 香港の若者たちは、日本やその文化(特にアニメ)が大好き。「日本のアニメには抑圧された人たちが巨大な敵と戦う話が多いのに、なぜ立ち上がらない」というのは、民主化運動の女神周庭(アグネス・チョウ)の言葉。さて、日本人はこれをどう受け止めればいいのでしょうか?