2022年発表の本書は、以前「国土と日本人」を紹介した、国交省元技監大石久和氏の近著。自然災害が多く山脈や河川で分断された、脆弱かつ不便な国土で育った日本人は、コミュニティを作るのが巧み。城壁で敵と味方を分断する、欧州の文化とは違うのだと力説された書だった。
本書も前半はそのトーン。「COVID-19」禍において、日本はロックダウンをしなかったことを上記のロジックで解説してある。日本人は個だと弱いが、自然にチームを作れるし集まれば強いとの評価だ。普通に読み進んだのだが、2/3を越えたあたりでがぜん面白くなる。
なぜ1995年を境に日本が凋落したかが、筆者流に解説してあるからだ。1995年と言えば、阪神大震災・地下鉄サリン事件のほか、
・生産年齢人口がピークになった
・政府が財政危機宣言をした
・金融機関が経営破綻、デフレ経済に突入
・規制破壊(改革じゃないの?)で短期雇用、非正規雇用拡大
などがあり、米国が日本の経済社会に介入(対日年次改革要望書等)して日本をグローバル化していったという。米国の陰謀は、憲法13条にもあるというのが筆者の主張。「すべて国民は個人として尊重される」とあって、家族など顔の見えるコミュニティで結束する日本人の強みをスポイルしているという。
コミュニティが基本だった日本企業も、グローバリズムに乗り成果主義・個人主義に傾いた。国際標準の名のもとに、内部統制等を押し付けられた。人事もグローバル化し、規制緩和もあって非正規は増えるし雇用は流動化した。
背後に山脈、前は海の狭い場所(例:鎌倉)で小さなコミュニティを作って生きてきた日本人に、強力な法規制は必要ない。顔の見える範囲で生きるモラルは誰もが持っているからだ。それをグローバル化がぶち壊したと言いたいようだ。
反新自由主義の論客藤井教授が帯を書いていたのに違和感があったのですが、読み終わって納得しました。でも僕はグローバリズムは捨てませんよ。