新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

パンデミックは世界規模の実験場

 2021年末発表の本書は、何冊か紹介しているジャーナリスト大野和基氏が世界の識者にインタビューした記事の集大成「世界の知性シリーズ」。元原稿は<Voice>誌に2021年3~12月に掲載されたものである。

 

 「COVID-19」禍は、世界に大きなインパクトを与え、各国政治の弱点を露呈、経済の収縮や反グローバリズムを巻き起こした。一方「非接触」を追求したことでデジタリゼーションは一部で突出、後戻りできない領域に入ってしまった。しかし悲劇ばかりを嘆くのではなく、パンデミックが引き起こした世界的な実験と捉え、幅広い視点で未来を見通すきっかけになるとある。実験という視点で、面白い発言をいくつか紹介しよう。

 

        

 

MMT理論が正しいことが実証された。各国政府が盛んに貧困層支援をしたが、経済はゆらいでいない。

 

◇米国はもともとが「ファンタジーランド」のようなもの。今回それが露呈され、利己主義が横行した。

 

◇人をステレオタイプで見るケースが多く、移民の貧困層がアジア人女性をねらう「ヘイトクライム」が横行した。問題は人種ではなく、狙いやすさ。

 

パンデミック(の薬の取り合いなど)で、先進各国の我欲が露呈。米欧間の信頼を決定的に破壊した。

 

◇上海をはじめとして、沖積平野/湿地帯上に造成された近代都市は、海面上昇と地盤沈下で壊滅が近い。

 

 などを総称して「近代の終わり」と称している。通常このシリーズは Global & Digitalを非難する論客が多いのだが、今回はあまりいない。パンデミックそのものがグローバル化の証だが、それはスペイン風邪以前でもあったこと。デジタリゼーションについても、SNSの拡散などは非難しているが、これは技術より使う人の問題と割り切った論調だった。

 

 ただ、どうしても僕はMMT理論には与したくないのですが・・・。