新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

米国政治を蝕んだ5つの変化

 来年の米国大統領選挙も、この顔合わせになると予想されている。2021年秋、バイデン政権が誕生した後に、同志社大学法学部の村田晃嗣教授が発表したのが本書。その年、一応の決着は付いたはずなのに「選挙は盗まれた」と信じるトランプ支持者も多く帯にあるように「戦いはまだ続」いているのだ。

 

 米国の中で長い時間をかけて進行してきたのが、5つの変化がありその結果として政治の世界の変異株たるトランプ大統領が誕生したとある。その5変化とは、

 

1)アイデンティティ・ポリティクス:WASPの人口が減り、白人がマイノリティになってゆく変化。すでにラティーノは総人口の2割を超える。

2)ステイタス・ポリティクス:格差が著しく拡大したこと、「我々は99%、ウォール街を占拠せよ」の運動が象徴的。

3)情報のニッチ化:規制緩和(とデジタル革命)によってメディアが多様化、個々の好みに合った情報源だけが受け入れられるようになった。

 

        

 

4)孤立主義アフガニスタン等への介入が長引き厭戦気分が高まったこと、急速なグローバル(経済)化に庶民が危惧を抱いたこと。

5)衰退論:中国の急速な発展により、世界覇権が失われるとの危機感の高まり。

 

 オバマ政権までのマイノリティの優遇策に辟易し、グローバル化や格差拡大で貧困層に落とされた白人層を中心に「トランプに賭けてみよう」との機運が高まったわけだ。国内の分断(共和・民主だけではない)がすでに「冷たい内戦」になっていて、民主党よりロシアの方がましとの声さえ聞かれたとある。

 

 冒頭の映画「市民ケーン」の引用に始まり、ハリウッドの各政権に対するスタンス含めて「映画を通してみる米国政治」が見えてくる。レーガンは俳優組合長からカリフォルニア州知事を経た大統領だが、ハリウッドは否定的だったとある。総じて民主党に肩入れする(例えばオバマ政権時に白人黒人宥和物語を製作)ことが多かった。

 

 筆者の淡々とした解説は、むしろ僕たちに危機感を与えてくれます。でも再トランプ政権、どうしたら防げるのでしょうか?