2022年発表の本書は、同志社大学政策学部太田肇教授(経済学)の日本型組織研究。筆者には、同調圧力や承認欲求に関する著書がある。本書の目的は「消極的利己主義」が日本に蔓延している現象と理由、さらに解決策を示すこと。日本型組織は、
・行政機関や企業、学校から町内会、PTAまで同じ構造
・表向きはOpenに見えるが、実態は家父長的な共同体(ゲマインシャフト)
・閉鎖組織なのだが、交流が増え(*1)外部情報は入って来る
・しかし「出る杭は打たれる」ので、個人は何もしないことが得と考える
・これが働かないオジサンややる気のない若者、所属組織を恨む構成員を産んだ
わけだ。家父長型共同体は、最初から構成員(家族)のコンセンサスは得られていて「組織の幸福=構成員個人の幸福」である。だから部分最適を求めればいい。欧米型、特に移民集団のような米国企業では、各構成員と組織全体の幸福は一致していない。これを調整する過程(マネジメントである)が必要で、中長期の展望を含めた議論が行われる。
日本型共同体も、個人が盲従していた時代は終わり、空洞化したことは多くの人が知っている。そして見て見ぬふりをしている。組織がいろいろな意味で傾くと、
・長時間労働など労働条件劣化
・濃密すぎる人間関係の欠点
・過剰な管理(やノルマ)
・不公平な人事評価
などが露呈してくる。これを正すには、企業なら組織の壁を薄くし社内外の交流(人事含む)を活発にする、ジョブ型雇用に切り替えるなどが有効。非営利型組織(PTA等)では民主化の三原則(自由参加・最小負担・選択)を再徹底するのが良いとある。総論として、
・(内向きロジックによる非難などから)個人を守る防波堤を設置
・(キャリアなどに)複数の選択肢を用意
・(よそ者・若者・バカ者のような)先導役を採用する
ことだとある。何冊か「失われた30年の原因」の解説を読みましたが、やっぱりここが主原因だねと思わせてくれたのが本書でした。