新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

この時何が起きたか、来年は何が?

 来年11月の米国大統領選挙に向けて、すでに全ての候補者は助走からトップスピードに加速しつつある。ニューヨークに住む友人は、もしトランプ政権(か類似のもの)が再びできるようなら、国外脱出を図りたいと言っている。

 

 2020年の大統領選挙は、有権者は関心を示した。高い投票率がそれを証明している。しかしその内情は、とても醜いものだった。2021年発表の本書は、米国内の朝日新聞取材班16名が、個々にレポートした31の記事と、7つのインタビューをまとめたもの。

 

 トランプ前大統領は、今でも負けを認めず「選挙は盗まれた」と主張している。現実には、現職でありながら敗北した11人目の大統領となったが、2016年を上回る7,400万票を獲得していた。マイノリティに深く食い込み、郵便投票を拡充した民主党の戦術に敗れたと言える。

 

        

 

 民主党内も一枚岩ではなく、サンダース候補のような社会主義者も多くの支持を集めた。高齢を不安視されたバイデン候補は「トランプに勝てる可能性が一番高い」と見られて、予備選を勝ち抜いた。決して彼の政策などが広く支持されたわけではない。

 

 本来民主主義の盟主であるべき米国で、様々でかつ深い分断が起きていた。経済格差・人種・地域・世代・性などである。「COVID-19」禍は、弱い立場の人達をさらに苦しめた。テレワークなどできない人たちはリスクを負って働き、例えば黒人は白人より感染率3倍、死亡率5倍との結果になった。

 

 インタビューのひとつで、ノートルダム大学デニーン教授(保守派の政治学者)は「人間は自然・時間・土地に縛られていたが、自由主義がそれを解き放った。その結果市民は貴族階級を打破できたが、この3条件に縛られないエリート層を産み、そこに富や権力が集中した」と言っている。

 

 グローバリズム推進派の僕としては耳の痛い話ですが、そういう意見もあったことを覚えておいて、来年の選挙を見守ります。