2022年発表の本書は、国際政治学者(元都知事というべきか?)舛添要一氏の独裁者シリーズ。前2冊はムッソリーニとヒトラーを取り上げたとあるが、トリのスターリンは2人を合わせた以上の「怪物」だったようだ。
グルジア(現ジョージア)生まれのヨシフ・ジュガシヴィリは、神学校を脱走するような乱暴者。ボルシェビキ運動に身を投じ、レーニンの側近として実力を蓄えていく。2人の独裁者が第一次世界大戦に参戦していたころ、彼は刑務所暮らし。しかし監視は緩かったようで、再三脱獄して共産革命運動を続ける。
ロマノフ王朝が倒れレーニンが政権を取るのだが、レーニンも決して聖人君子ではない。富農だけでなく農村全体から穀物を奪取して、地方に飢餓をもたらす。鉄の男を意味するスターリンと改名したヨシフは、その右腕として汚れ仕事をした。
第一次世界大戦から1922年の内乱終結まで、ロシアの犠牲者は1,600万人ほどだが、そのうちの半分は無茶な穀物徴発での餓死者である。それでもレーニン政権は、農村を工業化(コルホーズ&ソホーズ)して農家を事実上の農奴にした。
レーニンが暗殺未遂で傷を受け体調を崩すと、ライバルの理論派トロッキーらを追い落とし、共産党書記長としてレーニンの後継に収まった。この時大活躍したのが秘密警察のチェーカー、後のKGBである。1932年にも大飢饉が起きるが、スターリンは農村からの穀物徴発を強化、700万人ほどが餓死した。そのうちの500万人はウクライナ地域だから、ロシアと不可分なのはいざという時の身代わりという意味。
一方出る杭は必ず(出そうになったら)叩いた。有名な将軍トハチェフスキーすら、左遷され不審死している。70歳が近くなると猜疑心が強くなり、これまでも側近らを陥れて粛清してきた残虐さが増して、自らの医師団まで疑って殺した。1953年74歳で死去。寝室で倒れていたのだが、側近らは何もしなかった。万一死んだふりだったら、助けた自分が殺されるからだ。