新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日韓インテリジェンス協力に向けて

 G7広島サミットには韓国の尹大統領も参加、西側への親密ぶりを示した。ひょっとするとだが、来年はG8の一国になっているかもしれない。前政権でまったく途絶えていた、日韓の協力も再開すすだろう。その中にはインテリジェンスに関するものもあって欲しいと思う。そこで、古い(2007年発表)書だが、本書を再読してみた。内容は(何度か紹介している)元外務省のロシア専門家佐藤優氏が、韓国国防省海外情報部で日本と北朝鮮を担当した高永チョル元少佐にインタビューしたもの。

 

 高少佐は、金泳三政権でスパイの容疑をかけられて失脚した諜報官。米機にNSAが認定した特別情報官(SI)でもあった。韓国中央情報局(KCIA)は、米国の指導で活動する部分もあるが、陸軍中野学校のDNAも持って独自の動きもする。機密情報管理の4段階は米国のそれに倣っているが、金大中誘拐の時などはCIAの目を欺いて実行している。

 

        

 

 高少佐の発言で面白かったのは、やはり北朝鮮中野学校DNAの諜報機関を持っているとして、

 

・能力は韓国のそれを上回るかもしれない(韓国大統領選に介入できるほど)

・しかし「誠」をもって諜報する中野の教えに反し、金王朝への忠誠が軸になっている

 

 という。日本とのコリント(諜報協力)も可能とする高氏に佐藤氏は、「日本にスパイ防止法がないのが問題」としたうえで、

 

・情報公務員制度を作り、違反時には最高死刑にあたるとする

共謀罪、教唆罪を付加し、これで民間人も対象とする

 

 法整備があればいいという。今でいえば公務員対象の「特定秘密保護法」の改訂ということになるだろう。

 

 諜報員のリクルートについては、現在はCIAも公募しているが、本来公募はNG。有意な人材を一本釣りするのが良く「スパイになりたい」というヤカラは不合格だという。まだ中学生だったプーチンKGBの門を叩いた時、担当将校が、

 

「希望者は入れない。普通の法科・医科などの大学に行って、誘いを待て」

 

 と言い、プーチンはその教えに倣ったという。久しぶりに読んで、改めてインテリジェンスの世界の一端を知りました。面白かったです。