2022年発表の本書は、元経済企画庁長官宮崎勇氏と元日銀審議委員田谷禎三氏が書き続けてきた世界経済をマクロに見た書。前作が2012年発表で、宮崎氏が2016年に亡くなってからは、田谷氏一人で改訂作業をされたという。世界経済の輪郭に始まり、貿易、金融、摩擦、エネルギー、環境などの10章に分けて、世界経済を概観したものである。
第三版からの大きな違いは、軍縮の章が落ちて代わりに「デジタルエコノミーの深化・拡大」が入ったこと。今世紀初めにグリーンスパン氏が「インターネット革命は100年に一度の大変革」と語ったとあるが、ついに1章を占めるまでになった。
そのデジタルエコノミーだが、
・デジタル関連機器やサービスの価格は急激に低下
・企業は合理化だけでなく、企業戦略の策定のためにデータを活用
・IoT機器の普及などによって、データは5年で10倍のペースで増加
・越境データ量も増え、2011~2021年で26倍になっている
・中スキル職が減少し雇用が二極化、デジタルスキルの有無は給与に直結
・個人や企業をつなぐ役割の仲介者に膨大なデータが溜まり、力の源泉となる
・巨大なプラットフォーマーが出現し、株式時価総額の上位を独占
であるとして、下記のような課題を挙げている。
・メガテック企業の大量情報保有には、市場独占や個人情報保護の怖れ
・グローバル化したサービスに、各国課税当局が対応できない
・デジタル機器の利用技術が、大きな所得格差を産む
・ウイルス、ハッキング、サイバーテロのリスクが、多くの分野に広がる
あとがきでは、かつて「インターネットの登場は、彗星の衝突にも比すべき大事件」とした経済学者の言葉を引用し、もはやデジタルエコノミー抜きに世界経済は語れないと筆者は言う。
急激に進化したデジタルエコノミー、マクロな視点からの評価を知ることができて良かったです。