新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

昭和の因習を脱ぎ捨てよ

 2022年発表の本書は、何冊か著書を紹介した成毛眞氏と実践的な経済(経営?)評論家冨山和彦氏の共著。今月のNHK日曜討論で、政府の新しい資本主義実現会議メンバーでもある冨山氏が、

 

「地域や労働現場の現実はこうだと言っても、官僚や大企業社長は理解しない」

 

 と発言しておられたので、著書を読んでみたいと思っていた。単著が見つからなかったので、買ってきたのが本書(成毛さんごめんね)。

 

 失われた30年を作ったのは、基本は日本企業特に経営者だという点で2人の意見は一致。昭和の因習をひきずった経営者を一掃しないと、イノベーションは起きず新しい資本主義の時代も来ないという。特徴的な因習は、以下のようなもの。

 

・終身雇用制とこれを有利に思わせる退職金などの制度

・働かないオジサンを産むなどした、行き過ぎた企業内互助意識

・有事は起きないとの発想で、政治家・官僚・経営者もリスク管理をしないこと

・何を学んだかではなく、学歴で人物を判断し処遇すること

・伝統的な大組織に所属し、空気に従っていれば一生安泰という考え

 

        

 

 今後ホワイトカラーの仕事は(生成AIの登場などで)激減するのに、人手不足が顕著なエッセンシャルワーカーに転じようとする人がいない。いくら(新しい資本主義で)労働者に配分しようとしても、労働者側がアンマッチを解消しないのではどうしようもない。

 

 そもそも政府になど期待する方が悪いと(成毛氏は)いう。政府の役割は、

 

1)市場の失敗に対応

2)新しい(デジタル)産業構造に応じたルール作り

3)セーフティネット整備

4)経済と安全保障の交差領域への対応

5)人材教育と研究開発支援(決して介入してはならない)

 

 に限定すべし。新しい資本主義が軌道に乗ったとしても、主役は自由にイノベーションを追求する個人個人なのだというわけ。

 

 冨山先生が再三政府の会議でおっしゃったであろうこれらの言葉、政治家・官僚は耳を傾て欲しかったです。