2021年発表の本書は、英国在住のコラムニスト、ブレイディみかこ氏の「女性の政治指導者論」。2018~2020年にかけて<小説幻冬>の連載した記事を集めて、各国の女性政治家や運動家の姿を通した政治のありようを記したものだ。
英国で女性参政権が認められたのは1918年だから、まだ100年しかたっていない。しかし、世界には続々女性の政治指導者が現れている。最もその傾向が強いのが英国(*1)含む欧州で、日本は男女平等ランキングで120位ほどの国でもあり、政治はまだまだ男社会だ。
女性政治指導者の草分けと言えば、英国のサッチャー首相。町の商店主の娘がグラマースクールを出てオックスフォードで化学を専攻するのも珍しかった時代だが、彼女は保守党入りして政治家になった。これは稀有のことだった。
新自由主義的だとの(後世の)批判もあるが、貴族の男性に仕切られていた英国政界を揺るがせた実績は大きい。ただ権威主義的ポピュリストだったとも言われる。それは、
・アウトサイダーから出たムーブメントに乗った
という2つのポユリズムの特徴を備えていたから。今の欧州女性政治家には、同じ傾向がある。フランス国民戦線のルペン党首、イタリアのメローニ首相、ドイツAfDのワイデル院内総務らで、共通してイスラム教や移民を排斥している。まあ、イスラム教が女性の権利を制限する宗教なので、当然ではあるが。
日本の政治家としては、小池都知事と自民党稲田議員の名前が挙がっていた。いずれも「ガラスの天井」に挑み、日本政界初の女性総理を目指している。他に台湾の蔡総統、統一ドイツのメルケル首相についての記述もあった。
知らなかったのは、米国のコルテス議員。左派だが、とても分かりやすく政策を話すとある。こういう人が、バイデン対トランプの高齢男性対決の後に出てきてくれれば、米国も変わるかもしれませんね。
*1:旧英連邦も含む