朝鮮戦争末期の1952年春、米国海兵隊の6名が旧満州吉林近くの人造湖に潜入した。目標は中国共産党が稼働させている原子力研究所。国民党軍や地元ゲリラの助けを借りて、これを破壊せよというミッションだった。若干17歳でこの作戦に参加したローレンス・ガーデラ(通称リック)が、1981年に出版したのが本書。実話という建付けだったのだが、1987年には若干の補筆がされてフィクションとして(別出版社から)再版されている。
冒頭作者がCIAとおぼしき2人組から(最初の)出版を止めるよう求められ、
・30年近く秘密は守ってきた
・しかし白血病で余命いくばくもない
・死を前にして事実を公表すべきだと考えた
と拒否するシーンがある。実際、作者は最初の版の出版を待たずに亡くなっている。
このように曰く付きの作品で、人物描写や戦闘シーン(*1)は平板なのだが、中共軍の原子力研究のほかにも、驚くべき内容が含まれている。
・不審な動きをするCIAの工作員(2重スパイ?)
・国民党に米軍が供与した武器の横流し
・一般市民をみせしめのために虐殺する中共軍
・中共軍兵士は麻薬漬けで残虐行為をする
・中共軍に協力するロシア人部隊
6名の海兵隊員は目標攻撃の段階で4人を失い、リックとその師匠であるベテラン軍曹ガニーだけになった。2人はドラゴン・レディーとあだ名されるゲリラの女性リーダーに助けられ、内モンゴルから万里の長城を越え北京に潜入、毛沢東も見かけている。その後、華北平原を突っ切って東シナ海に脱出する。まさに敵中横断1,000マイルである。
フィクションにしてはいやに細部がなまなましく、物議を醸しそうなネタも多い。1971年のキッシンジャー訪中で米中関係が緩和され、このような歴史は闇に葬りたいと米国政府が考えた可能性はあります。誰か歴史家が解き明かして欲しい、実話か小説かの謎でした。
*1:20人ほどの攻撃隊で、少なくとも100人の中共軍を殺し、その場にあった火炎放射器やバズーカを駆使して、戦車まで破壊する。