新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

北欧の警察小説、全10巻開幕

 「英米中心、ちょっとだけフランス」というのがミステリー界の常識だったが、20世紀後半になっていろいろな国のミステリーが紹介されるようになってきた。その嚆矢となったのが、スウェーデンの警察小説である「マルチン・ベックもの」。1965年発表の本書は、その第一作である。作者のマイ・シューヴァルとペール・ヴァルーは夫婦作家。妻のマイは詩人、夫のペールはジャーナリストで、リアルな警察小説の構想を温めた。

 

 2人は、1年に1作、全10作のシリーズを書くと決めて、それを完遂した。最終話は病床のペールを看病しながらマイが完成させたという。最終話発表後、ペールは48歳で亡くなっている。主人公は、ストックホルム警察の殺人課主任警視マルチン・ベックとその仲間たち。マルチンは有能な刑事だが、家庭生活に悩んでいる一人の夫でもある。銃は携行するが、下手だし好きではない。

 

        

 

 今回の事件は、湖水地帯の田舎町で引き揚げられた若い女の全裸死体で始まる。幸い腐乱はしておらず絞殺だと見られたが、身元も分からなければ、どこで殺されたのか、どこで棄てられたのかも分からない。地元警察はお手上げだが、応援に派遣されたベックたちもての打ちようがない。

 

 ところが数ヵ月経って、米国警察から「被害者は米国人のロゼアンナ」との連絡が入る。夏休みを北欧の一人旅で過ごそうとした女らしい。米国警察からの情報によると、いわゆる尻軽女で旅先でも情事を繰り返していたと思われる。やがて被害者が乗っていた客船が特定でき、捜査陣は100人近い乗客乗員から聞き込みをし、写真の提供を求めるのだが・・・。

 

 緻密な捜査を描く「北欧の87分署もの」として、楽しく読めるのですが「フリーセックスの国」らしく奔放なシーンが目立ちます。学生時代は、ちょっと気恥ずかしかったのを覚えていました。