新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

21世紀型経済の処方箋

 先日水野和夫氏の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」を読んで、今世界で起きていることの多くが説明できる説に驚いた。要は地球上からフロンティアが消え、これを前提としていた資本主義は維持できないというものだ。

 

超マクロ経済学による説明 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 感心はしたのだが「じゃあ、どうすれば?」が書いてなかったので、僕は戦争を起こして無理やりフロンティアを作る(例:マーシャルプラン)くらいしか解決策を見いだせなかった。まさか以前紹介した共産党史的唯物論のように、資本主義の次は共産主義だというわけにもいかない。

 

 そこで見つけたのが本書、帯に「前著を継ぐ」とあったので買ったのだが「株式会社の終焉」というタイトルには疑問があり「資本主義の終焉ならその構成要素の株式会社は当然終わる」と思った。しかし、読み始めると「世界で最も重要な組織は会社」とする説が紹介されている。

 

・中世の賢人は「教会教区」

ヘーゲルは「国」

マルクスは「共同体」

ヒトラーは「政党」

 

 が重要だと言うが、これらは全部間違っているとある。

 

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 本書は、古代からの「株式会社の歴史」を追いながら、フロンティアなき21世紀型の株式会社のあり方を通じて、世界経済の正常化を目指す処方箋である。数々のデータや経済理論に裏打ちされた「歴史」の分析は、素人の僕には難解である。しかし「これからどうすればいいか」の部分については、理解できた。

 

 日本を始め先進国の諸問題は、フロンティアから搾取できなくなって資本に金利を払えなくなっているのにそれを強要されることが原因だという。その結果、資本主義の本来の姿は、預金者は「ローリスク・ローリターン」、投資家(株主)は「ハイリスク・ハイリターン」なのに、現実は預金者が「ハイリスク・ローリターン」、投資家が「ローリスク・ハイリターン」になっている。これは「K字回復」でも明らかだろう。筆者が描く処方箋は、

 

・株式会社は成長戦略を止め、株主配当も止め、減益計画を策定、労働者に還元する。

・政府は株式会社への資産課税を導入、内部留保金を徴収する。

 

 とある。なんとなく日本共産党の目指す社会に近いような気もするのだが、これだけ理論的に説明されると納得してしまいそうだ。

 

 しかし(偉い専門家に対し失礼ですが)僕は、技術革新でサイバー区間や宇宙空間をフロンティアにする方を選びますね。