新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ニューヨークを食べる&事件

 1997年発表の本書は、以前「グルメ探偵、特別料理を盗む」を紹介したピーター・キングの「グルメ探偵もの」の第二作。前作ではロンドンの有名店同士の争いに巻き込まれたグルメ探偵と名乗る「ぼく」の、腰抜けっぽい活躍を紹介した。本書では世界中の職が集まるところニューヨークに「ぼく」が出張、幻のスパイスが消えた件と殺人事件を追うことになる。

 

 古代文明ギリシア、ローマ、エジプト、中国等々)が高貴な食卓に備えていたという幻のスパイス<コ=フォン>は、500年ほど前に絶滅したと言われていた。それが今回再発見され、ニューヨーク(NY:一番高く買ってくれる場所)に運ばれてきた。その鑑定を依頼されたのが、「ぼく」と友人のドン。ドンは英国人だが、NYで<スパイス倉庫>を開業している。

 

 JFK空港の税関に売り手と買い手、鑑定人2人が集まって<コ=フォン>を鑑定した。結果は「本物」。しかしその直後、スパイスを収めた箱から、中身が消えていた。さらに翌日、ドンが何者かに射殺され「ぼく」は窃盗&殺人の有力容疑者になってしまう。

 

        

 

 捜査はNY市警の特殊犯罪捜査課のゲインズ警部補と、ロッシーニ巡査部長が担当する。貴重な品の窃盗など、特殊犯罪を担当する部署で、10日間で解決しないとショカツに担当が移ってしまうようだ。彼らの捜査に付き合うため「ぼく」は、2泊3日の出張予定を伸ばしてNYに滞在することになる。

 

 世界中の美味しい物が集まる街NY、「ぼく」は捜査に加わるというより美味しい物を食べ歩く傍ら、捜査にも協力するというスタンス。フランス料理・イタリア料理・中国料理からアフリカ料理まで(捜査にかこつけて)食べ歩いている。ホテルの部屋でも、ポテトやヒレ肉を簡単調理して<ステーキ・ダイアン>を作ってお酒を呑んでいる。

 

 そこに<コ=フォン>を手に入れたい健康食品研究者、薬品会社、食品企業への融資担当者、高級料理店主らがからんで「ファース」な騒動が続く。銃も持たず荒事が出来ない「ぼく」は、イタリア系美女であるロッシーニ巡査部長に助けられてばかり。お礼はレストランでの食事・・・という次第。

 

 それでも抜群の嗅覚や味覚で、真犯人を指摘することができました。ミステリー色は前作より強くなりましたが、やはりレシピやワインの参考書としての価値の方が高いですね。