新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

バラクラバ公爵夫人の自然死

 1970年発表の本書は、以前「大空に消える」を紹介したパトリシア・モイーズのヘンリ・チベットと妻のエリーが鴛鴦探偵をするシリーズ。本書も藤沢駅前の古書店で偶然見つけたもので、探してもなかなかみつからないシリーズである。

 

 主任警視に昇進したヘンリは、副総監に呼ばれて特命を言い渡される。第二次世界大戦前から社交界の花形だったバラクラバ公爵夫人(通称クリスタル)が、「殺されるかもしれない」と政権上層部に保護を求めたというのだ。警視総監すらアゴで使う70歳の老婆は、誕生日に3人の娘夫婦を集めてパーティを開く。ヘンリとエリーは身分を隠して参加し、夫人を守れと命じられた。

 

        

 

 3人の娘はいずれも国際結婚をしていて、贈り物を用意して帰国する。

 

・長女はスイス在住、医師の妻で生活には余裕がある。贈り物はケーキ

・次女はオランダ在住、年下の園芸家と結婚し生活は苦しい。贈り物はバラの花束

・三女はパリ在住、父親ほども年上の米国実業家の妻でカネはうなるほど。贈り物はシャンパ

 

 頑健で不器量だが誠実なコンパニオンのドリーだけを頼りにしている夫人は、降霊術で危険を知ってヘンリらを呼び寄せたのだ。パーティの席上、毒見役を買って出たヘンリはケーキをかじり、バラの匂いを嗅ぎ、シャンパンを飲んだ。問題なかったのだが、夫人は卒倒して死んでしまう。遺体が解剖されたが毒物の痕跡は皆無で、検視医は「自然死」という。

 

 現場に偶然言わせた女医サラとヘンリらは、この結論に納得しない。副総監から捜査打ち切りを言われても従わず、ローザンヌ・パリ・ロッテルダムと3姉妹を訪ねて謎を解こうとする。この「毒殺トリック」はとても素晴らしい。

 

 序盤の奇々怪々、中盤のサスペンス、意外な犯人と鮮やかな解決という3拍子そろった本格ミステリーで、女王クリスティの後継者といわれただけのことはある作者の手際です。加えてチベット夫妻のあたたかな会話が面白く、秀逸なシリーズだと思います。めげずに探しますよ。